第17話カラドボルグVS信二のバディ
「最近、兄貴が会社辞めてさ~」
「えー?やべー」
「貯金あるっぽいし、仕事探してるみたいだから心配してないけどさー」
放課中、友人と雑談していた晃のもとに香奈枝からメッセージが届く。
動画が添付されており、そこには1体のバディが剣を振るう様が映し出されていた。
刃が届いていないというのに、動きに合わせて街路樹が倒れ、建物に亀裂が走る。
息を呑む晃の耳元から、能天気な声が掛かる。
「おぉ、すげぇ。映画?」
「何見てんの、晃」
晃は友人達に断り、教室を出て行く。
メッセージを入力するのも煩わしい。廊下の隅で人目を気にしつつ、香奈枝に電話を掛ける。香奈枝はすぐに出た。
「あぁ、東っち」
「何すか、あれ?いつのっすか!?」
「映像は今朝のやつだよ。イカれたプレイヤー…かボスじゃない?昨日来たでしょ」
信二の行方を尋ねると、暴れているバディを退治しに向かったそうだ。
香奈枝も隙を見て抜け出し、信二の応援に向かうつもりらしい。
彼女は晃に出て行かないよう釘を刺し、こちらに出現した際は応援に行けないと告げた。
「今学校でしょ、気をつけて」
「いや、そっちこそ気をつけてくださいよ」
「勿論。じゃあ、またね」
電話を切り、鉄の玉を呑み込んだような気分で晃は授業を受ける。
幸いと言うべきか、これまで身近な人物が戦いに巻き込まれたことは無い。
しかし、遠からずそうなるかもしれない。守るなどと大層な事を言う気は無いが、自分が矢面に立つしかないのだろう。
信二は海塚市を東西に伸びる絹通りでカラドボルグを発見。
美術館入口の柱の陰に身を潜めたまま、己のバディであるリベンジをけしかけた。
視界に移る街路樹は全て切り裂かれ、身動きする通行人はいない。
肩から脇腹にかけて両断された高齢の女性2人連れが、信二から2mほどの位置で転がったままアスファルトに赤黒い液体を広げている。
けたたましいサイレンが近づいてくる。
(警察か?…誰か救急車を呼んだのかもしれないが面倒だな)
信二のバディは手甲から炎球を続けざまに放つ。
肘まで覆う炎の塊が独りでに空を飛び、カラドボルグに殺到する。横に跳んで躱し、避けきれない軌道を描くものは剣で斬り払った。
まもなく警察車両が数台、通りにバリケードのごとく広がった。レベル20ボスの背後に陣を張った彼らは周囲の惨状と、警告を聞き入れなかったカラドボルグとリベンジ目がけて発砲。
草色の騎士が剣を振るう。リベンジは後退するも、直後に不可視の刃に甲冑を切り裂かれた。
後方の警察官はあっという間に壊滅。
信二のバディも耐えてこそいるが、終始圧されている。
拳打を一発浴びせる度に、少なくとも二度斬りつけられてしまう。信二が殺戮に積極的でないがゆえに、レベル差がついているのだ。
武器のリーチ差もある。
(退くか……あの妙な飛び道具、斬撃を飛ばしてるのか?)
信二はバディを走らせ、カラドボルグの様子を窺う。
方向も制御もない、壁があれば壁を破り、通行人や街路樹を跳ね飛ばしながらの疾走。
バディが囮になっている間に、この場から立ち去るのだ。
騎士は思惑通りバディを追跡。音が遠ざかった頃合を見て、信二は美術館入口前から脱出した。
リベンジは脇目もふらず全力疾走。
その後ろからカラドボルグが斬撃を飛ばすが、避ける気配すら見せない。
背中に斬撃を浴びながらも、リベンジは追跡者を一顧だにしない。
炎を放ちながら全く減速せずに駆けているが、ダメージは入っている。まもなく死ぬだろうと考えた刹那、信二に呼び戻されたリベンジは姿を消した。
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