第996話 チビッ子編 👻 初めてのお留守番(4)電話

 晴が投げるボールに翻弄され、怒ると泣かれ、お絵かきならするというのでクレヨンを出してやったら、

「違う!」

と言ってパズルを出せと言って泣かれ、怜と直は散々だった。

「お絵描きするって言ったよね」

「何で晴は言った事をちゃんとしないのかな」

 何を信じていいのかさっぱりだ。

 ドタバタしながら3人でどうにか過ごしていると、今度は電話が鳴り出した。

 晴が走って行って、取る。

「あ!晴!」

「こんな時は足が速いよね」

 呆然とする思いで、怜と直は電話に出る晴を見た。

「はい!町田です!……んん?いないよ。お母さん、帰って来ないよ。……お兄ちゃんと怜だけ。……お兄ちゃんの友達。……ずっと帰って来ないよ」

 怜と直は、晴に電話をやめさせようと思った。

「晴!ダメって言われただろ!」

「嫌!お話するもん!」

「晴ちゃん、直の言う事聞くって言ったよね」

「知らないもん!」

「晴の嘘つき!」

「お兄ちゃんのバカ!」

 晴は受話器を思い切り投げつけ、兄妹は揃って泣き出した。

『もしもし?もしもし!?』

 怜は晴が投げ捨てた受話器を拾い、そっと電話機に戻した。

「おばちゃん、早く帰って来ないかな。兄ちゃん、迎えに来てくれないかな」

 怜は溜め息をついた。



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