第993話 チビッ子編 👻 初めてのお留守番(1)怜と直と怪獣と
「とれた」
直の妹の晴は、直に熊のぬいぐるみを突き出した。
「ん?ああ、エプロンが外れたのか。ちょっと待ってね」
直は一生懸命に、熊が首からかけているエプロンのひもを結び直す。そしてようやくちょうちょ結びができ、晴の方へそれを突き出した。
「はい、できた――あれ?晴?」
いない。と思ったら、絵本を読んでいた怜に突撃していって、頭突きしてそのまま滑って転がりそうになっていた。
「うわあああん!」
「晴ちゃん!危ないよ!」
怜が顔面からスライディングしないように受け止めていたが、ほとほと困り果てたような顔付きだ。
「晴。ほら、できたから」
熊のぬいぐるみを差し出しながら、
(これでしばらく静かになるかな。怜と本を読んでる途中なのに)
と思った。
が、晴はぬいぐるみをぽいっと放り投げると、今度は本を引っ張り出す。
「ダメだって!破れちゃうから」
「ちょうだい、ちょうだい」
「晴!ダメ!あ」
本を奪った晴は次の瞬間、両手でページを破っていた。直のお気に入りの挿絵のページだったのに。
「うわあああん!」
泣きたいのはこっちだと、直も泣き出した。
「うわああん!」
直も晴も泣き出して、どうしていいかわからなくなった怜も、泣き出した。
「うわああん!」
これが最近の、よくある光景だった。
そんなある日、直の母がお願いをしてきた。
「ちょっと買い物に行って来るから、お留守番していてくれる?もうお兄ちゃんだから、大丈夫よね?」
そう言われては、できないとは言えない。
「いいよ」
「晴の面倒もお願いね」
「……うん。わかったー」
少し不安はあったが、怜も直も頷いた。
「ピンポンが鳴っても、ドアを開けちゃだめよ」
「うん」
「電話が鳴っても、出なくていいからね」
「うん」
「じゃあ、お願いね」
「いってらっしゃあい」
こうして、怜と直、6歳。初めての留守番となったのだった。
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