第982話 ゲスト出演(1)お化け屋敷の都市伝説
暗い廊下を歩いて教室へ入ると、バン、という大きな音がして、思わず首を縮めて音のした方を見た。すると黒板に真っ赤な手形が浮き上がっているのが見えた。
「わっ!?」
驚きはするが、予測範囲内のもので、そう怖くはない。
後ろのドアから出る為に机の間を歩きながら、ドア脇の掃除用具入れのロッカーが怪しいと思っていると、不意に背後から声がした。
「今日の日直は?」
反射的に振り返るが、誰もいない。
なので体の向きを戻すと、すぐ横の席に座る、血塗れで無表情な半透明の女子生徒と目が合った。
「あなたの番よね」
持ち上げた折れた腕にはナイフがある。
「うわああ!!」
叫んで、後ろのドアから廊下へ飛び出した。
すると今度は、すぐ目の前に猫が座っているのが目に入った。どこかふてぶてしい、野良猫のようだ。
と、それが低く唸り、飛びかかって来る。
「ぎゃっ!?」
横っ飛びに避けると、足元の頭大の石が人の顔に変わり、その恨めしそうな目と見つめ合う事になった。
「ギャアアアア!!」
たまらず叫んで、逃げ出した。
そこで徳川さんは付け加えた。
「でもこのお化け屋敷が怖いのは、そういう仕掛けじゃないんだよ。だれも用意していないのに、勝手に猫の霊が出て来るところなんだよ」
「よく、お化け屋敷には本物が――って聞きますよね」
「これもそういうものですかねえ」
「それが、実害があるらしくてね。客の足を実際に引っかいたり、暴れてセットを壊したりするそうで、営業妨害だって警察に被害届を出したんだよ」
「それじゃあ仕方ないですね。
今、皆色々と割り振ってるし、僕と直で行こうか」
「そうだねえ。お化け屋敷かぁ。何か新鮮だねえ」
こうして僕と直は、そのお化け屋敷に行く事になったのだった。
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