第935話 チビッ子編 👻 サンタクロース大作戦(2)日本家屋への侵入口

 晩御飯の後、本を見ていた怜は、司に訊いた。

「サンタさんは働き者だね。世界中に子供はたくさんいるのに」

「そうだな。大変だろうなあ」

「どうやって、一晩で皆のところに行くのかな」

 司は頷き、

「大丈夫だ。地球には時差というものがある。一晩と言っても、厳密に言うと――」

と説明しかけ、怜が流石に理解していない事に気付いた。幼稚園児には無理だったか。

「つまり、魔法だ」

「おおー!」

 怜は目をキラキラさせて納得した。

 そして、何か考えるようなそぶりを見せると、絵本に目を落とした。

「兄ちゃん。煙突って、この煙を出すところだよね」

「そうだな」

 そして、司を見た。

「うちには煙突がないから、サンタさん、入れないよ。壁に穴、開けないとね!僕頑張るね!」

 怜の向こうにいた父が、慌てて皿を落としそうになり、母が柿を落としそうになった。

「が、頑張らなくていいぞ。その、大丈夫だ。日本の家には別の侵入口があるからな」

 司は怜の壁破壊を止めなくてはと、平静を装って答える。

 怜は少し考えて、ポンと手を打った。

「ああ、あったね!」

 全員、あったか?と思ったが、怜はにこにことして指さした。

「換気扇!脂が付かないように、掃除しておかないとね!

 いや、外しておかないと入れないよね」

 母が、柿を取り落とした。

「えっと、あれだとキツイだろう?」

「ダイエット?」

「いや……そう。日本の場合は、窓とか、な。トナカイのそりに乗って来るから、空は飛べるからな?」

「そうかあ。じゃあ、窓の鍵は開けておかないとね」

 怜はにっこりと笑った。

 そのくらいならまあいいだろう。そう思って、司もにっこりと笑った。




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