第894話 チビッ子編 👻 はじめてのおつかい(1)出発

 きつねのリュックを背負って、怜は気合の入った顔をしていた。

「パン屋さんまでの道は、ちゃんとわかってるか?」

「あい!」

「パン屋さんに行ったら何て言うんだった?」

「こんにちは!」

「……そうだな。それから?」

「食パンくらさい!」

「どの食パンだったかな?」

「赤いの!」

「じゃあ、食パンをもらったら次は?」

「ありがと!」

「……ええっと、何かを渡すんだったよな?」

「うう?あ、お金!」

 怜は思い出して、首から下げた、小さな金魚のがま口の財布を両手で捧げ持った。

 今日は怜の、初めてのおつかいだ。近所のパン屋さんに食パンを買いに行くというものだが、両親の最終確認を見ていた司は、心配でしかたがない。

「じゃあ、お願いね」

「車に気を付けるんだよ」

「あい!」

 怜はいい返事をして、意気揚々と家を出て行った。反対向きに。


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