第482話 おにぎりじぞう(4)おすそわけ

 ピクニックから帰ると、敬は機嫌よく、葉っぱとどんぐりを並べ、クレヨンで絵を描き始めた。

 ちょうど天照大御神とイエス、十二神将が遊びに来、彼らと兄、冴子姉に、僕は声を潜めて事情を話していた。

「お地蔵様の前に遭難して死んだ人の霊がいて、空腹で動けなくて絶望してた時に、敬がおにぎりをお供えしたんだよ。それで、ありがたそうに手を合わせてた。

 で、その敬が危ない目に逢ってたから、お礼に助けてくれたんだよ」

「そうだったのか」

「お地蔵様だとばっかり」

「霊を変に恐れないのも怖いし、もう、それでいいと思うよ」

「そうだな」

 兄もそう言い、そう言っておく事に決まった。

「しかし、無事で良かったな」

 照姉は言い、胸を撫で下ろした。

「カメラが頭に直撃したら、大変だもの」

 天后は想像するかのように、肩をすぼめた。

 と、敬が、

「できたあ!」

と声を上げ、落書き帳を見せに来る。

 三角と宇宙人がいた。

「ほう。どれどれ。これは……何かな?」

 照姉が訊く。

「おにぎりじぞう!」

 堂々と答える敬の中で、あれは、おにぎりじぞうと命名されたらしい。なるほど。いいセンスじゃないか。

「上手に書けたな」

 兄に褒められて敬は嬉しそうに笑い、そして、テーブルの上のお菓子を取って来た。

 そして、全員に、クッキーを1つずつ渡していく。

「ん?これは?」

 騰蛇がそれを見て訊くのに、敬はにこにこと答える。

「美味しいの」

「くれるの?」

 勾陳が訊くと、頷く。

「あのね、美味しいのは皆美味しいの。だから、皆で食べると皆美味しいの」

 イエスは笑って、敬の頭を撫でた。

「嬉しいなあ。そして、実に正しく、美しい」

「敬君、ありがとう」

「司。怜といい、敬といい、お前は教育が上手いな」

 照姉は機嫌よく言って、敬を膝に抱き上げた。

「恐れ入ります」

「では、皆で頂こうか」

 全員で、一斉にクッキーを齧った。

 僕は、兄ちゃんを褒められて嬉しく思いながら、思い出した。

 神様というものについてちゃんと教えようと思ったのに、これじゃあ親戚の人みたいだな、と。

 まあ、いいか。その内自然にわかるだろうし、今更だ。

 





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