第50話 探す・ユキ(1)つないだ手

 顔を伏せ気味にして、足早に交差点を渡る。なるべく通りたくない道なのに、工事や時間の都合で、ここを1人で通る羽目になってしまった。

 天野優希あまのゆき。お菓子作りが趣味の大人しい女子で、心霊研究部員の1年生。時々、霊が見える。今も、道を渡ろうとしては車に轢かれる霊が見える。

 だからユキは、それと目を合わさないようにしながら、急いで通り過ぎた。

 ほんの小さな頃は、どうだっただろうか。いつから、見える事があるようになったのだろう。そう考えて、ユキは子供の頃の記憶を辿り、それに行きついた。

「マミちゃん……」

 それは、小さい頃、1番仲の良い友達の名前だった。


 いつも一緒で、よく大人たちに

「姉妹みたいね」

と言われていた。好きな花も、好きな遊びも、好きな食べ物も一緒。この先幼稚園も小学校も、ずっとずっと、仲良しだと、無邪気に信じていた。

 それなのに、ある日突然、つないでいた手は離され、二度とつなぐ事は叶わなくなったのである。

 そうだった。あれまではまだ、幽霊なんて見えなかった。あの後、見えるようになったのだ。

 大好きなマミちゃんと、マミちゃんを連れて行ってしまった幽霊を探す為に。

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