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「いや、正確には名前が、分からないんですけれど」
良く話を聞くと、名前は分からないけれど顔は知っている人らしい。会社に来るどこかの誰か。
かなりふんわりした答えなのは彼女が人の名前も顔も覚えるのが苦手だからだと思う。それなのに一先ずは会社に来る誰かという所まで分かったのは凄いことかもしれない。
いや待てよ、それはそれで知っている人が夢に何回も出て来るのも怖くない?
「どうでしょう? 多分、その人だとは思うんですけれどもしかしたら勘違いをしているのかも? うちの会社に来る人はだいたいみんなスーツを着ているし、あんまり見た目が変わらないから。もしかしたら違うかもしれません」
・・・そりゃぁ営業と言えばスーツを着て働いている人が多いだろうし、確かにぼんやりと似ているかもしれないけれど。
「でも間違ってないと思うんですよね」
「それはどうしてですか?」
「だって、この間会社で居眠りをしちゃった時、丁度その男の人が出てくる夢を見ていて起きた時にその人を見かけたんですよ。夢の最後で見た横顔と、通り過ぎた横顔が一緒だったから。あれ? 一緒のように見えただけなのかな?」
話しているうちに混乱したのかヤマギシさんは小首を傾げる。って会社で居眠りしたのかい。ヤマギシさん、仕事大変そうだもんな。
「でもあんまりパッとしないような感じなので違うかもしれません」
パッとしないだなんてそんな失礼な。でもま、興味が無かったらそんなもんか。興味が、無かったら。
「気になってはいるんですけど、本当に夢の人なのか」
「それじゃぁ今度はその人が本当に夢に出てくる人なのか確認をしないとですね」
「どうやって?」
どうやってって、俺だってそんな経験ないから分からないけどもしかしたら名前と顔を一致させたら夢の中でも鮮明に出てきてその人がどうかわかるかもしれないじゃない?
もしかしたら無意識のうちに気になっている人、だったりして。ヤマギシさん、そういうの鈍感そうだし、なんて。
「まずは名前と顔を一致させて仲良くなってみるとか?」
「あなた、私の夢に良く出てくるんですって?」
いやそれはちょっと、怖いのでやめましょうか。
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