身のまわりの怖い話

六地蔵

生首サンド

以前勤めていた会社は、都内でも有名な処刑場跡地の近くにあったせいか、いろいろあった。


エレベーターがテナントの入っていない無人のフロアに止まるなんていうことは日常茶飯事であったし、血だらけの幽霊を見たなどという人もいた。


その日、仕事が遅れていた私は、忘年会には参加せず、一人職場に残っていた。しかし、どうにも煮詰まってしまい捗らない。こんな時はパソコンの前で唸るよりも少し体を動かした方がいい。私は少しオフィス内を歩くことにした。


ところで、このオフィスには少しおかしなところがある。仕事の資料などを収めるキャビネットが、壁から少し離して置いてあるのだ。距離にすると20㎝程度だろうか。本来であれば壁際に寄せてスペースを広く使うべきところをである。


気分転換にオフィス内を歩いていた私は、その隙間を見た。


生首が浮いていた。


苦しそうな表情を浮かべた中年の男の生首が、キャビネットと壁の間に挟まっていた。


そのとき、上司がオフィスに入ってきた。一人で仕事をしている私に差し入れを持って来てくれたのだという。いつのまにか生首は消えていた。

たった今、目の前で起きた出来事を上司に話した。「でたか」と半ばわ笑いながら彼は言った。


でるのだという。キャビネットを壁から離しすぎると生首が動き回る。壁につけすぎるとその中で暴れる。だから、あれはあの位置がいいのだそうだ。


少しして、オフィスは別のビルに移転した。あのキャビネットも持ち出された。

あの生首がどうなったのか。ずっと気になっている。

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