お~ば~ろ~ど 【ぷるぷる・ぷるちねっら?】

トータス

第1話 まじっく・しょ~? 【杖/ケーン】

 プルチネッラは、ナザリックが誇る道化師コメディアンであり、ナザリックに属する以外の他者を不幸にすることで、幸福を実感し、その価値観を強要する人格破綻者とされる。


 他人ヒトの不幸は蜜の味、とまさに言行一致する。


 ナザリックの道化師ジェスターとして、日々研鑽を積むプルチネッラ。


 その仕事ぶりは勤勉であり、ナザリックに所属する総ての者の幸福を願う求道者である。


 そんなプルチネッラも、ナザリックに属する子供に対してはHENTAIなほどに甘やかすのではないだろうか?


 特に、子供の笑顔と泣き顔が大好物だから。



   ・・・   ・・・   ・・・



 点々と赤黒い何かがそこかしこに散りばめられ、サビに似た金属の匂いが漂う舞台。

 その舞台の前、デミウルゴスの膝の上にちょこんと座るリュート。これから何が始まるのか、興味津々な様子で見ている。


準備わレディー終わりエンド邪悪なる者達よイーヴィルメンズ! イッツァ・ショゥ・タ~ィム」


 張り切って舞台に立つは、長い腕と丸い体型に純白の衣類を纏い、カラスの様な太めのクチバシに似た仮面を身に着けたプルチネッラ。抑揚のない淡々とした声で開演を告げる。


「でわ、最初のマジックを御覧いただきます」


 テーブルに置かれた数々の品の中から颯爽と手に取ったのは、何の変哲もないねじれたつたが絡み合ったステッキ


「これわ、杖です。消失杖バニシングケーン、あるいわ、出現杖アピアリングケーンなどと呼ばれるものもあるようですが、これわ違います」


 プルチネッラはそう宣言すると、地に着きそうな手で持って杖をカッカッカッと突き歩いてみせる。ただ、杖の長さが合っていないせいか、黒い床に出来ていた水溜りに突っ込んだ時に杖の先が滑り、ベシャリと転んでしまった。


 慌てて照れたように起き上がると、その純白だった衣装は、真っ赤な衣装に早変わり。


 わっと、観客が沸く中、プルチネッラはその反応を確認し満足気にうなずくと、説明を続ける。


「歩く時の補助具にして、時として護身のための武器、魔法の発動体にも使える便利な道具でわあります。なので、この様に乱暴に扱っても大丈夫なように、ドガッ!ボグッ!ゴスッ!


 実演するかのように、そばに設置された皮袋を殴打。


「丈夫にわ作られているのです」


 その皮袋には何か液体でも詰まっているらしく、しかしあまり丈夫な皮ではなかったのか、あたりからピチャピチャと液体が滴り、舞台を汚す。


「おや、皮袋のほうわ駄目になってしまいましたか」


 それに気がついたプルチネッラがパチリと指を鳴らすと、トーチャー達が現れ、それを引き上げていく。振り返るプルチネッラの衣装は、また早変わりし、赤と黒のチェック柄に変化した。


「でわ、つづきを。この様に何の変哲もない杖も、怪しい呪文を掛けると不思議なアブナイことが起こるのです」


 杖の中程を掴むプルチネッラが柄頭を上に向け、「てぃんくる・てんたくる・RAPE BLOSSOM菜の花」と唱えると、閉じた蕾のようだった柄頭が膨らみ、解けて黄色い花が咲き誇る。


 見事に咲き誇る花を見て、デミウルゴスは拍手喝采。リュートも、ビックリして拍手を繰り返す。


 それは、艶めかしいぬめりを帯び、媚びへつらい、とても触りたくなるような誘う蠕動ぜんどうをする黄色い触手を持つ【花】が咲いた。


 その触手は、瞬時に長く伸び、トーチャー達が舞台袖に下げた皮袋に絡みつくと、あっさりと皮袋が萎み、干乾びていく。内部の液体を呑み込んだようだ。

 プルチネッラは慌てず騒がず淡々と、「てんたくる・てぃんくる・蔦の杖ヴァインスタッフ」と唱えると、シュルシュルと元通りに近い、ネジくれた杖に戻った。


 ただ、敢然に元通りとは言えず、一輪の赤い斑点を帯びた黄色い花が小さく咲き誇る。


 プルチネッラは観客に一礼し、次のショーへと取り掛かろうとする。


「プルチネッラ、質問なのだが。この後、あの残された皮袋は?」

「もちろん、皮紙加工に回されるのです。ただ、あまり良い皮紙にわなりそうもありません」

「そうかね、まだ未加工なのだから、これからに期待しようか」






次回/【シルクハット】

 シルクハット、それは主に鳩やウサギが飛び出す不思議な帽子?

 世間一般なら・・・ね? ナザリック風なら・・・

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