屋上屋‹おくじょうおく›を架す
大学は自由だった。
ヘラヘラしていれば、友達もできた。
カラオケだの、クラブだの、飲み会だの、サークルだの、旅行だの、何だのと、所属する為には、とにかくお金がかかった。
家族がいる時に帰らずにすむので、夜のアルバイトは都合が良かった。
ヘラヘラしていれば、お金が入った。
特に、偉そうな客には気に入られた。ただのバカな女子大学生だったからだろう。
偉そうな客は、皆小綺麗なスーツを着ていた。
母は昔から、「金がない、金がない」と事あるごとに言っていた。
だからうちは貧乏なんだと思っていた。
その言葉を聞くと、自分が居てはいけない気がして、頭の後ろが暗くなっていった。
高校からアルバイトをして、親からはお金を貰わなくなった。
母は何も言わなかった。ただ「金がない、金がない」と言っていた。
頭がどんどん暗くなるので、学費の足しに、とお金を渡した。
私も気がつけば「お金が足りない、足りない」と暗い頭で唱える様になっていた。お金がないと、心がどんどん荒んでゆく。
そう言えば、父の身なりも小綺麗だった。
家にあまりお金を入れず、自分に使っていたのだろう。
父も家庭の事を考えず、虚栄を張っているだけだった。
そして、私も同じ様なものだ、と思った。
心の暗さを埋める為にお金を稼ぎ、使い、どうでもいい大学に行き、何も身にならない事をしている。本当にヘラヘラした、何も考えない生活だった。
屋上屋を架す…屋根の上にさらに屋根を架ける。むだなことをするたとえ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます