至福の時

勝利だギューちゃん

第1話

俺はたまにしか、東京に行かない。

東京というものは、本当に疲れる。

緑がない、空がみえない、どこへ行っても体に悪い。

俺の肌には、都会は合わないのだ・・・


でも、どうしても仕事で、行かなければならないと時もある。

そんな時の、唯一の楽しみがある。


それは、行きつけのカフェに行くこと。

このカフェは実にいい。


カランカラン

ドアを開ける。

「お兄さん、久しぶり」

「マスター、いつもの」

「かしこまりました」


そういって、俺は席に着く。

カウンター席だ。

ここは、マスターと会話ができる。

ここでの会話が、俺にとって至福の一時だ。


程なくして、紅茶が運ばれてくる。

サンドイッチが付いていた。

「マスター、頼んでないけど・・・」

「サービスですよ。お兄さん」

「・・・そう、遠慮なく・・・」


サンドイッチを口にほうばる。

「マスター、相変わらず美味いね。」

「まずけりゃ、この仕事できませんよ」

マスターは、コップを磨きながら、笑顔で答える。


「静かだね、マスター」

「この時間はね・・・でも、もうじき混みますよ」

マスターは、忙しい時間にそなえて、下ごしらえを始めていた。


「バイトは雇わないの?」

「ひとりでやるのが、好きなんですわ。

兄さんもわかるでしょ」

「・・・ああ・・・」


俺は頬杖をついて、物想いふける。


店内の時計を見ると、11時を過ぎていた。

「マスターお勘定。俺も仕事に戻りますわ」

「また東京に来られた時は、いらしてくださいね」

「もちろん。ここは好きだからね」


お会計を済ませ店を出る。

入れ替わりに、何人かが入って行った。


「マスター、大変だろうな。俺もだけど・・・」

そういって俺は仕事に向かった。


誰かが言っていた。「東京は夢は目を開けていないと見えない」と・・・

(本当にその通りだな)

心の中でつぶやき、仕事に向かった。


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至福の時 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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