ボッチと女装男子
タナカ
第1話茜、転入
この世に生を受けて早16年。そこそこいい感じに育ち、俺、笹原は高校二年生になった。そして、新しいクラス編成がされた今、教室内は騒然としている。それはいいのだ。
「キャー、ABCちゃんと同じクラス〜!」
「俺、進学コースかよ、マジかー!」
そう、ここら辺は別にいいのだ。「普通」、だとボッチ民族の俺も思う。
だがな、ボッチ民族を続けている俺には、いくつか言いたいことがあるんだ。
【Part1】
A「あ、〇〇!また同じクラスだな!」
B「お前も進学コースか!よろ!」
A「ところでさ、なぁ、窓際にいるアイツ…誰?」
B「えっ、どれどれ?んー、転校生じゃね?」
まずこの会話をしたお前達に言いたい。
何故転校生が当たり前のように先に教室にいるんだよ、流石に担任から紹介があるだろう!あと、誰?と言ったそこの茶髪!お前は去年同じクラスだ!話したこともないし、目すらあったことねぇけどな!
ま、俺もあんまりお前のこと覚えてないけどさ!
【Part2】
C「あ、俺〇〇って言うんだけど、お前は?」
「…俺は、笹原」
C「へぇ〜よろしくな!」
「…あぁ」
それ、去年も言われましたー!どうせ今年も忘れるんだろう!知ってるよ!自分から話しかけてくるなら覚えろや!それとも忘れるくらいなら聞くな!
【Part3】
D「なぁ、知ってる?アイツさボッチなんだよ」
E「へぇ、そうなんだwかわいそー」
D「俺〇〇これからよろ!」
E「俺△△よろしく」
俺の事覚えているお前はかなり珍しい人間だ。褒めてしんぜよう。
ただな、何故ボッチを話題にして友人の輪を広げるんだ!
せめてほかの話題にしろよ、何かあるだろ!
え?え???(鬼の形相)
俺だってな友達は欲しいさ、一人くらいは!
*****
さて、そろそろ何故俺がボッチ民族なのかを語るべき時が来たようだ。そう、全ては中学二年の時から始まったのだ…。
俺は中二の夏、父親の転勤で☆☆中学校に転入した。
【☆☆中学校】
担任「新しいお友達が転入しました〜、それでは笹原くん、自己紹介お願い!」
担任の先生の声掛けと共に、始めた自己紹介。
「笹原です。読書が好きで、最近は綾辻〇人さんの本をよく読んでいます。あと、漫画も好きです。前の学校では水泳部に入っていました。よろしくお願いします。」
これの何が悪かったのだろうか、この後誰も話しかけてこなかった。後から知った話だが、俺が転入したクラスは、水泳部の派閥で分断されていてややこしい感じだったようだ。(担任よ、先に教えておくれよ、そういうことは…)
どっち派閥になるかで俺も俺に関わるやつも環境が変わるみたいな、それくらいの大きな分裂だったらしい。怖いな中学。まぁ、俺も一人でいることは元から好きだし、いいや、って思ってたら心外にもズルズルと引きずって、今のようにすっかり拗らせた。さよなら俺の青春、そう思ったのはいつだったっけ。
********
昔話にふけっていると気づけば、予鈴がなり始め、教室に担任の先生が入ってきた。あんなに騒がしかったクラスはしんと静まる…ことは無くより騒音が増大した。特に男子の声。何だ、うるさいなと思って人々の視線の先である担任の後ろの方を見ると、黒髪の二つ団子の転入生がいた。背は160くらい…。平均か?(よく分からないが)
目のぱっちりとした転入生に
「かわいい!」の声が多量に浴びせられていた。
あぁ、確かに可愛い顔をしている。だが、青春と別れた俺には関係ない話だ。俺の嫁はダメ〇リのリュ〇だけだ。どうせ今から紹介とか一年の抱負とかの下らない話が長々と続くのだろう。よし、俺は本を読むか。今は夏樹〇子先生の本にハマっているんだ。読書ばっかりして、今年も俺は壁のシミだ。
********
突然だけど、僕は女装が好き。何故かって?そりゃあこの顔ならそうなるだろ。童顔、背は低め、スタイルよし。完璧にかわいいわけではないけれど澄んだ声。逆に言えばカッコイイ男の子であることを諦めただけだけどね!パピーが転勤で☆☆高等学校に転入することなったんだけど、校則ゆるいから女装で登校出来た。担任の先生は
「あー、俺の好みはショートヘアだからツインシニョンは守備範囲外。」
って言ってきた。ツインシニョンもかわいいだろ!まぁいいや。新しい学校で僕はどんなポジション(クラス)になるのかな〜。まぁ、女装男子はウケて打ち解けるかボッチのどっちかだな〜どっちでもいいや!さてさて、クラスメンバーの反応はいかに!
担任の先生について行って教卓の前に立つ。黒板には大きく僕の名前が。クラスを見渡すと、好奇の目、嫉妬の目、色々と向けられている。ただ一つ気になることが一つ。窓側角席のイケメンが見向きもしない。それに本読んでるし。その隣、空席ってことは僕はあの席だし。こら、イケメン、この僕に振り向けっ!(意味深)
「自己紹介お願ーい」
担任の先生の声で我に返って僕は自己紹介を始めた。
「静宮茜です!声で分かったと思うけど、僕は男ですよ!好きなことは読書と歌うこと。最近の悩みは、我が妹に背を抜かれたこと。よろしく!」
たった15秒位の自己紹介はクラスの男子を絶望させてクラスの女子の人気を手に入れたようだ。簡単に言えば、打ち解けられたみたい。イケメン以外は。
担任の先生に誘導されてイケメンの隣の自席に着く。イケメンは何の本を読んで…って!それは!夏樹〇子先生のwの〇劇!僕もそれ好き!今の時代で読む高校生いたんだ!イケメンとは趣味が合いそう!この一日で仲良くなりたい!
と思ったはずなのに、もう放課後…。ねぇ、まだ一言も話してないし、目すら合わない何これ。イケメン君、授業終わったら何故かもう教室にいないって何。びっくり。
「僕の隣の席のイケメン君ってどんな子?」
前の席の小池くんに聞いたら
「ああ、笹原か。んー、俺喋ったことないけど、一応中三の時クラス一緒だったけど、成績優秀、運動万能、イケメン、無口、読書家って事しか分かんね。高校での成績知らねぇけど進学コースだし、元から賢いんじゃね?でも、友達いねぇよなアイツ…、話かけづれぇしさ。まあ、それもかっけぇって実は人気。俺も1度でいいから会話してみてぇわ」
マジか、イケメンこと笹原、お前完璧かよ。
ありがとう!と言ってはおいたが気になったのは無口っていう点。無口、友達いないを通りこしてこいつ一日誰とも喋ってない。やっぱり、気に入った。
よし、友達になってもらおう。
「ねぇ、笹原くん、僕と友達になって!」
翌朝、読書しているイケメン君にそう言ったら、初めて目のあったイケメンの顔は酷く驚いていた。
******
「ねぇ、笹原くん、僕と友達になって!」
隣の女装男子から耳を疑う声が聞こえた。思わず本をパタリと閉じ(落とし)振り向く。今、俺の名前言った?友達になって?え?笹原って誰?俺?困惑する俺に女装男子は
「その本僕も好きだよ!僕こっち来たばっかりだかさ、本屋の場所とかよく分かんないし、良かったら教えてよ!僕のことは茜でいいよ!」
爽やかな笑顔…神様、三次元にも天使っているんだな。ただ、怒涛の展開に
「いいよ」
とだけしか答えられなかった。
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