打ち上げ花火、どこで見るか、誰と見るか

カゲトモ

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 どおりで朝から騒がしかったはずだ。マンションのエントランスにある貼り紙をみて納得した。

 今日は夏祭り。ド平日だけど花火も結構な数が上がる比較的大きな祭りだ。

「花菱さんはお祭り行くの?」

 後ろから掛けられた言葉に振り返って答える。

「行く訳ないじゃないですか」

 ただでさえ暑いのに人混みに揉まれに行くなんて。

「あら、そうなの? 若いのにもったいない」

「いやいや」

 行きも帰りも地獄だし、涼しいホテルの部屋で見られるって言うなら別ですけど。

「そうよねぇ、私もそうだったら喜んでいくんだけれど」

 保住さんは困った顔で「ふぅ」と息を吐く。

「小さな子供が居るとそう言うわけにも行かなくて」

「お孫さん、帰ってきてらっしゃるんですか?」

「そうなの。毎年この日は夏祭りじゃない? だからお盆の帰省を少し早めにして帰ってくるのよ」

「そうでしたか、賑やかになりますね」

「なり過ぎて困るのよ」

 なんて困ったように言っているけれど、表情から言葉から嬉しい気持ちが溢れているのが良く分かる。“おばあちゃん”って顔だ。

「小さいのが二人もいるとね。それにとってもお転婆だから目が離せなくて」

「男の子ですか?」

「それがね、女の子なのよ。娘に似たのかしら」

 ふふふ、と穏やかに微笑む保住さん。以前一度見たことのある娘さんは、保住さんとは違ってほっそりとした活動的な感じがした。旦那さんは細い人だけどインドアっぽい感じだし、活動的なところは保住さんに似たのかもしれない。もしかして保住さんも若い頃は娘さんのようにほっそりとしていたのかも?

「二人とも小学生なんだけれど、お祭りに行くのを楽しみにしていて。今は宿題を頑張っているの」

「宿題しないとお祭りに行けないって?」

「そう。結局はそれが一番効くのよね」

「ふふ、そうですね。憶えがあります」

 子供ってのは大人以上に現金で単純だもの。

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