岸辺で
韮崎旭
岸辺で
岸辺で震えながら噛み砕く錠剤は甘い。
つなぎのでんぷんのせいだろうなと思いながら、化学的環境を壊していく。
自己嫌悪なのか、死に焦がれるのか、鑑別は必要か。
来ない朝を願うのは、売春婦でもフクロウでもないがしかしナイトウォーカーであるから。
眼が耐えられないのが光。
ここに強い真昼と、人間の群れがあり、文明と理性があるとされているが、実質掃きだめゴミため猿の群れ。
何より下等な自己を認めて生物になっていることを呪った。
何より下等な生物で、意識を抱える事故を恨んだ。
瑕疵物件でこちらはございます。
岸辺で、風に揺れる陽は温く、爛れた皮膚を優しく壊す。切り刻まれた、分断と意図。苦い思いが辛うじて、つなぎとめては見苦しい。生存以外の醜態があろうか。常に晒す醜態に吐き気がする。実際に吐こうが、ポライトリイに振る舞おおうが、それらの間にどんな差があるんだ。
「お前は生物だ。それはすなわち醜態だ」
損傷することで守ったのが意識だろうか、私にはないものが、全てだ。暖かな光はもはや不要であり、火葬炉が、自死が、毒物が、のたうち回るほどの苦痛が、求められる。渇望している。
どうかそれらで忘れさせてくれ。一時でも、人間性を。そこに世界がないことを。
岸辺には、鷺の影。夕暮れの、グラデーションをかき分けて溺水する、死胎に似た怨嗟。その泥に沈められることを望んだ。消極的ではいけないと知っているんだ。騙すことの卑劣さを、薬理作用とともに噛み砕き理解しているようなつもり。
例えばこう。
ポップでありたい。キッチュに生きたい。かわいく壊れて、ジャンクに笑って、弛緩した言葉で光を紡ごう。
不健康で弱弱しい電工、蛍光灯の光、水銀の慈愛。
「お前は忘れたか。そんなに、気狂いのふりが楽しいか。薬物依存症患者であっても、どれほど損ねても、人間から踏み外しても、人間性を見下して、楽しく生きたいとは、結構な神経だ」
鈍感と空白が喉を潰す夜に。歓迎される死は私を歓迎しない。
岸辺では、水面が、もう沈もうとする腐乱したような赤を反射してきらきらと、コウモリの群れがヘリオトロープを背景に切り絵として作用し、何かの旋律が聞こえた気がする。
岸辺で噛み砕く錠剤は私を救いはしないだろう。それを私は喪失し、遺棄し予め剥奪されていた。
存在に資格はなく、私は薄暗い陰で気色悪く笑う。求めた苦痛で暖をとる夜に。
岸辺で 韮崎旭 @nakaimaizumi
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