第一章 異なる世界は危険が一杯

第1話 メテオストライク!

「おめでとうございます! 貴方は神の投げた隕石ダーツに当たった幸運な当選者です! 副賞として女神の加護を与えましょう!」


 目を覚ました僕が最初に聞いたのは、その様な馬鹿げた事をのたまう元気な少女の声だった。

 最も、僕がその声の主を“少女”だと判断したのは、背中まで伸ばされた白い髪と声質が少女特有の高く、可愛らしいものだったのでそう判断しただけで確定事項ではない。


 だってそうだろう?


 目を覚ましてからこっち、ずっとこちらにお尻を向けて存在に対して、男か女か、大人か子供かの判断をしろと言った所で無駄である。


「いやーそれにしてもラッキーでしたねっ!! 本来であれば海に落ちたり森に落ちたり山に落ちたり……人に当たるって事は滅多にないんですよ! そんなラッキーな貴方への副賞はなんとっ! スキルですっ!」


 両手を広げて天井を仰ぎ見る少女(仮)。

 ちなみに、何もないはずの天井からは何故かヒラヒラと花びらが舞い降りていた。


「あのー。何だかよくわからないんですけど、話をするんであればちゃんとこっちを向いて欲しいというか……。っていうか、君どうやってこの部屋入ったの? ひょっとして新たな説教強盗の類?」


 話しかけつつひょっとしたら窓を破壊されて侵入されてしまった可能性を考えて窓に目を向けてみると、そこには今まで見た事のない荒野が広がっていた。


「何これ!? まさか、さっきの隕石の影響で周囲の建物全て吹っ飛んだの!?」

「ふふっ!! 嬉しいですか? 嬉しいでしょう! 今回差し上げたそのスキル! なんと、自分の体を直すばかりか、の損傷まで完全に修復する事のできる破格のスキルなのです! これでもう怪我が治った瞬間に全裸っ!? という事態も避けられますネ!」

「いやいや! 無視すんなよ! っていうか、傷がない! 服も治ってるよ! すごい! いや、そうじゃなくて、外! どうして荒野になってんの!? あと君! どうやって部屋に入った!? それよりいいからこっち向け!」

「ふふっ!! すごいでしょう!? でもなんと!! 今回の副賞はこれだけではありません! 今回は私を含めて3人の神の投げたダーツ隕石が連続して当たったということもあり、なんと! 今回に限り! 3点! 驚きのスキル3点をセットでプレゼント致します!」

「おいっ! 話聞けよ! なんだよそのテレビショッピングみたいな説明は!? というか無視すんなよ! いや、とりあえずこっち向け!」


 完全に眼中にないというよりも、声すら聞こえていないという態度で話し続ける少女(仮)に手を伸ばした僕だったが、肩に触れる前に何やらバチッと感電でもしたかのような痺れが走り、思わず手を引っ込めてしまった。


「痛っ! 何これすっごい静電気!?」

「二つ目のスキルに関してですが、これはどの様な存在に対しても意思疎通が図れるという最強の言語スキルですっ! え? 自分と意思疎通を図るためにあえてそのスキルにしたんだろうって? いやですねー違いますよぅ。だって、このスキルを与えてくれたのは私ではない他の神様ですよ? ……え? その神様にお願いしただけだろうって? ……はっはっは」

「え? 今否定しなかったね? 否定しなかったよね!? それよりも、今どんな存在とも意思疎通できるって言った? え? ひょっとして本当に僕以外の別のと会話してる? 意思疎通しちゃってる? まさか、今回隕石に当たってスキルを貰ったのって──」

「まあ、今回3人の神様の加護を同時に与えなければならなかった都合上、3人の神様が管轄している4つの世界の狭間に住んで貰うことになっちゃいますけど、些細な問題ですよねっ! だってスキルすごいですもんっ!」

「おい今なんて言った? すっごい重要な事サラッと流さなかった? 世界の狭間って言った? 狭間ってなんだ? ひょっとして窓の外の荒野がそうなのか!? 後、3つ目のスキルは何だよ? 説明してなくね? ひょっとしてめんどくさくなっちゃった? 若しくは忘れちゃった? 頭弱そうだもんね!」

「それでは! 今回は本当に当選おめでとうございましたっ! この度は説明担当としてローズバーンズ担当女神のリリアスが説明させていただきました! また逢いましょう“クリアハイツ105号練”さんっ!!」

「それこの部屋!! この部屋の名前ぇぇっ!!」


 最後まで僕を無視したまま、女神を名乗るリリアスさんとやらは、さもそこに天井など無いかのように天井を突き抜けて姿を消した。

 結局、最後まで僕は彼女の正面からの姿を目にする事は無かった。


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