万能部屋は異界に浮かぶ
路傍の石
序章
プロローグ
160万分の1。
それはどこぞの学者が隕石が人間に当たって死亡する確率を計算したものらしい。
個人的にはどの様な基準でその数字を計算したのか気になる所だが、率直な感想としては『え? 意外と高い数字だな』というものだった。
そもそも、どうしてこんな確率計算を当時の僕がネットでググったのか、既に思い出せないけど、ニュースなんかでも隕石にあたって死んだ人の情報なんてほとんど聞かないのに、宝くじよりも高い確率でヒットする可能性があるという調査結果に納得できなくて、忘れることが出来ずに未だに頭の片隅に引っかかっていたのかもしれないという事だった。
ちなみに、どうして僕が今こんな事を考えているかというと、今から遡る事10秒前。
凄まじい轟音と共に目が覚めて天井を目に映したとたん、突然その天井に大穴が空き僕の腹に鈍痛が走った為だ。
最初に考えたのは落石だった。
しかし、僕の住むアパートは築18年のオンボロではあるものの、周りには山も崖もない一戸建てで、プライベートの時間を満喫できるお気に入りだった。
二階建て以上の足音による騒音も、壁ドンを恐れてテレビやステレオの音量を気にしてビクビクする必要もない空間。
しかし、幾らなんでも空から降ってくる岩塊。いや、鉄塊かもしれないけど、鉱石が降ってきて僕のお腹をぶち抜くなんて想定するわけなかった。
「ごふ……えぶ……」
「嘘でしょ?」と言いたかったのだが、口から漏れるのは変なうめき声だけだ。
震える手付きでお腹に触り、目の前にかざしてみたら真っ赤だった。
どうやら、僕の人生はこの瞬間にジ・エンドらしい。
「……ゴポ……」
呼吸をしようとしたら口から鉄臭い液体が変わりに吐き出され、息苦しいやら痛いやらで早くこの時間が終わってくれとしか思えなくなってくる。
本当はもっと生きて沢山やりたいことがあったのに、こんな状況になると苦しみからの開放しか考えられないのだなと実感した。
……頭がジンと浮き上がるような感覚に陥り、意識が薄れていくのが自分でも分かる。
そして、こうして薄れゆく景色を眺めながら最後に思ったのは、腹を損傷して死ぬのは、思っていたよりもずっと時間が掛かるんだな……という事だった。
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