Einzelgänger

高志千悠

登場人物/舞台設定/梗概

【登場人物】

椿ツバキ・アンネリーエ・ツヴァイク

MSS特殊科学捜査班に所属する未成年捜査官の少女。14歳の機械化児童。

子供工場キンダーヴェルク〉卒業後MSSに就職し、特殊科学捜査班へ配属された。

メリアー体で作られた特殊装備と転送技術を駆使し、カメリア捜査官としての潜入捜査による情報収集及び重大事件発生の未然阻止がその主な任務。

14年前に起きた〈クーデター事件〉の際に彼女を身ごもっていた母親は軍と警察の争いに偶然巻き込まれ銃弾により負傷。母子ともに危険な状態となり、母親は緊急出産で椿を生むかわりに死亡している。だが生まれてきた椿も銃弾によって脊椎を損傷しており、奇跡の生存を果たしながらも生まれながらにして〈子供工場キンダーヴェルク〉送りとなっている。警察官であった彼女の父親もまた、クーデターの最中に死亡している。

このような出自もあり、「自分は母親の命すら奪っておきながら、何も持たないで生まれてきた」という劣等感に苛まれている。



◎ドミニク・竜胆リンドウ・カナー

特殊科学捜査班の捜査官の一人。男性。捜査班主任の補佐的ポジションについており、椿たちを陰に陽に支えている。

外部組織との対外交渉やMSS内部での情報伝達などを(主任に押し付けられて)一手に引き受けており、捜査班の組織運営上、欠くことのできない一人。


◎イルマ・菖蒲アヤメ・フリッシュ

特殊科学捜査班主任。ドミニクをはじめとした捜査官たちを日夜こき使う女王。

組織内外に多くの人脈・コネクションを持ち、椿たちが捜査で使用する装備などは、イルマ発案で兵器開発局に共同開発させた物が多い。

普段は傍若無人に振舞っているが、捜査官たちの名前の由来となった花の色にちなんで髪を染めるなど、密かに捜査班メンバー思いだが密かすぎるきらいもある。


◎ジェイコブ・苧環オダマキ・ベルタランフィ

特殊科学捜査班きっての色男。しかし本人が堅物のため、あまり良い噂は聞かない。

捜査班の中でも椿と同じく、ラボ内での研究・検証調査ではなく、都市内での情報収集任務にあたることが多い。

情報収集任務ではその色男っぷりから多く収穫をあげており、メリアー体を使った変装を主とする椿の潜入捜査と合わせて、捜査班の重要な情報収集戦力となっている。


【舞台設定】

西暦二〇二三年のミリオポリスが舞台。

〈壱百万都市道化事件〉をきっかけにしてMSS内に設けられた特殊科学捜査班たちが、優れた情報収集能力を用いて斥候的捜査による凶悪犯罪発生の未然防止に挑む様を描く。


【梗概】

ミリオポリス第二十五区にあるアパートの一室で殺害事件が起こる。MSS特殊科学捜査班は現場に残された可覚仮想空間(UR)技術を体験できるマシンの解析を任される。

URマシンに残されたログからは最新の使用者として〈子供工場キンダーヴェルク〉卒業生の男、アーベル・ホフマンの姿が浮かび上がり、男を殺人事件の第一容疑者として捜査を開始するが、ほどなく二十五区内でホフマンが昏睡状態で発見される。

検査の結果、ホフマンの昏睡はフリック・ポイントの喪失によって起こっていることがわかる。何故そのようなことが起こっているのか、椿たちはホフマンが機械化義手に施していた違法改造の技師探しと並行して調査を進めるが、そのなかで近ごろ身体の機械化を施した者たちの中で流行る遊びの存在を知る。

それは脳内チップを介して仮想空間を知覚するというUR技術の特徴を用いた、ネット上に構築された仮想人格アンリアル・ニーバー(UN)とコミュニティを形成し、知覚可能な仮想空間でゲーム等で遊ぶというもので、ホフマンもUNとのとあるコミュニティに参加している一人だった。また同コミュニティに所属していた人物が、事件発生から少し前に事件を起こし、ホフマンと同様に昏睡状態に陥っていることを知る。

コミュニティについての調査を開始。都市内に存在する、URマシンを使って誰でも手軽にUR技術を体感できるカフェを突き止めた椿たちはカフェの捜査に入るが、そこで元機械化児童たちによる集団自殺の現場に遭遇する。

事件の想像以上の重大さに椿たちが気付き始めたタイミングで、都市のいたるところで脳内チップ保有者たちが暴走し始める事件が勃発。MSS本隊が捜査に乗り出す事態に陥る。

コミュニティについての調査に焦点を絞った科学捜査班は、コミュニティの中核ともいえる仮想人格が、とある生身の人間の人格と統合されていることを突き止める。

その人間とは、ミリオポリスにマスターサーバーが導入された当初行われたマスターサーバーと脳の接続実験の被験者で、実験後意識が戻らないまま今も都市内で眠っている人物であると特定された。

都市によって秘匿された存在がネット上の仮想人格と統合されることで意識の表出を実現し、都市に対して報復を行っているのが今起こっている事態の顛末だった。

MSS接続官の協力により仮想人格から統合された意識を乖離させることに成功させるも、事後処理の一切は椿たちのあずかり知らぬ場所で進められ、一切は暗闇の中へ消えてゆくことに。

特殊科学捜査班の事前の情報収集により都市内での脳内チップ保持者の暴走を最小限に抑えることができ、彼らの有用性の証明は成されたものの、椿は「もしかしたら自分も彼らと同じ立場にいたのかもしれない」という大きなしこりを残したまま、事件は終結する。

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