ふまじめなあとがき
(※注意)タイトルに「ふまじめ」とあるように、このあとがきは裏話・ネタバレ・筆者の自己満足を多分に含みます。それでもよければお付き合い下さい。
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明確なクライアントの存在しないアマチュアの創作活動においては、必ず自分なりの終着点、あるいは目標が必要だと私は勝手に思っています。なので、私はこの作品を書き始めるにあたって2つ、自分の中で目標を立てました。
・当初の予定通りのストーリーを書き上げること。
・責任を持って必ず終わらせること。
「みつめたさきは」という作品は、手塚治虫先生の「三つ目がとおる」を読んでいたときにふと思いついたアイデアが発端です。「三つ目がとおる」の主人公・写楽は額の絆創膏を取ると覚醒する特性がありますが、そこから「三つの目が開いた時に覚醒するフレンズっておもしろそうだな」と私は感じたわけです。その後あんなことやこんなことがあり、私のノートの上に主人公・サキが生まれました。ちなみに一番最初の仮題は「みつめちゃんがとおる」でした。くだらねー
フレンズとセルリアン、それからヒトの遺伝子をもったキメラ生物である医者のサキ。このキャラクター設定と「運命を切り開くのは自分自身」というテーマを物語の主軸とし、そこから思いつくエピソードをいくつか作っていきました。その中で実際に採用したのが糖尿病を患ったサーバルのエピソードと、おばさんになったミライとの邂逅シーン、それからヒイラギというキャラクターです。それから間をつなぐエピソードを一つ一つ繋ぎ、この物語に一つの筋道を通しました。そして作った道に医療という彩色を施しました。
そのようにしてこの作品は出来上がりました。書きながら多少の変更は加えていきましたが、大方私の描きたかったストーリーが書けたかなと今は感じています。
連載中、何度も書く気が起きなくなったり、時間的余裕が無くなったりしました。そうなった時私は自分に対し「お前は患者を見捨てるのか」と問いかけるようにしていました。作中でユウホが言っていたように、医師は受け持った患者の治療について責任を持つ立場にあります。それと同じ様に私も、一度小説を書き始めてしまったのだから、責任を持って最後まで小説を書き切る責任がある。そう自分に言い聞かせPCに向かい続けました。今、ようやくその責任を全うすることが出来たようです。
筆者として一つ、申し訳ないと思っていることは、目標を達成することに拘るあまり、毎回の更新がコンスタントに1万字を超えるようになってしまったことです。1万字といったら原稿用紙25枚、それだけの分量を気づけば読者の方に毎回押し付けてしまっていました。結局この作品の合計文字数は40万字オーバーというとんでもない量になりました。本当にごめんなさい。ついてきてくれた読者の方々、本当にありがとうございました。
☆主な登場人物に対するコメント
サキ
一応ハブのフレンズですが、影響が弱く体表の模様は非常に薄くしっぽも短いです。セルリアンの手足を細かく動かすのに結構なエネルギーが必要らしく、そのため大食いです。作中で十分活躍してくれたのであとは割愛します。
どうでもいい話ですが、私はサキの声は小清水亜美さんの声で脳内再生していました。
ヒイラギ
本当に良く頑張ってくれました。「ブラックジャック」におけるピノコ的な役割です。2065年生まれのイエイヌ(柴犬)のフレンズであり、元はオスの子犬です。なので一人称は「僕」です。サキはユウホの遺伝子を継いでいるため、医療行為は難なく行えますが、ヒイラギは普通のフレンズであり、もともとそれほど手先は器用ではありません。幼い頃からサキの訓練を受けて、注射や検査器械の操作を覚えたのでしょう。その意味で、この作品における本物の秀才はヒイラギかもしれません。ヒイラギという名はサキが付けた名前です。花言葉は”魔除け・保護・先見の明”
どうでもいい話ですが、私はヒイラギの声は真田アサミさんの声で脳内再生していました。
博士
群れの長。2058年生まれ。短期間ではありますがヒトの教育を受けています。皆に慕われている賢者らしさを意識しかなり賢く描いてしまったため、「けものフレンズ1〜3」での高慢ちきな性格と解離が生まれてしまったのが反省点。ですが私は賢さと知識欲に全振りした博士を描きたかったのです。
初期段階では博士と助手はカルテ1のみの登場の予定でしたが、話を転がす役回りとして適任だと感じたため準レギュラーになってもらいました。お疲れさまでした。
助手
群れの長の助手。2060年生まれ。博士よりも毒舌で、背の低い博士を小馬鹿にしていますが、実際は博士を一番慕っているフレンズです。
サキの最初の患者となった助手は当初、サキを拒絶しました。そんな助手もだんだんとサキのことを認めていき、最後には大切な博士をサキに任せる決断をしました。この作品を通して、実は助手も結構成長しているのです。
博士よりも寿命の長い助手は、いずれ跡を継ぎ長になるでしょう。その時、助手はどんな長を目指すのでしょうか。
サーバル
みんなご存知パークのスーパーマスコット。糖尿病に罹り、最終的に尊厳死を選択するというルートは初期段階からありました。ただ、人気キャラクターであり個人的に思い入れもあるサーバルを、作品上で死に追いやることには抵抗がありました。
しかし医療という題材を扱うのであれば死という出来事は避けては通れず、患者の死に立ち会うことは新米医師・サキが医師として一歩成長するための重要な経験となる。そう考えサーバルの死を描くことを決心しました。
尊厳死については今なお議論が続く問題であり、このことについてどう考えるかは各個人の信条に依ることが大きいと思いますので、ここではその賛否については触れないことにします。重要な点は、動物であるはずのサーバルが、自らの命を自らの意志で絶つという決断をしたことです。
サーバルは長い間ミライというヒトと暮らしていたために、よりヒトに近い精神構造をもつようになった。そのため動物の生存本能に反した、理性に基づく意思決定をすることができた、というのが筆者である私の考えです。
尊厳死という最終的な判断に説得力を持たせるためには、フレンズらしからぬ精神を持ったサーバルという人物をじっくりと描く必要があると考えました。そのため3章もの長期にわたり、サーバルの生きる姿を綴ることにしたのです。
今振り返ると、私はこのサーバル編が一番書きたかったんだと思います。
ミライ
元パークガイド、現セントラル勤務の幹部スタッフ。40才のおばさんになったミライを登場させた作者さんは多分、あんまりいないと思います。この作品ではユウホの大学の後輩で、ユウホより後にパークに就職したという設定です。
2058年の巨大セルリアン異変の後、ミライは昇進しセントラルで幹部職員となります。しかしこれが彼女にとって幸せなことだったのか・・・きっと彼女の幸せはいまでもキョウシュウエリアのサバンナの大地に眠っているのでしょう。
キョウシュウエリアに対してヒトの介入は許されていません。しかしなぜミライはサキと接触することが出来たのでしょうか。これにはちゃんとした理由がありますが、少々下衆な理由なので書くのが憚られます・・・一言で言うと「ヒトの医師ではないサキへの責任のなすりつけ」です。無論これはミライの意志ではなく、他の幹部職員達の意向を反映したものでしょう。
マツリカ
幽霊と呼ばれていた白いフレンズ。マツリカの持病であったチェディアック・東症候群はマニアックな疾患ですので多くの方はご存知無かったと思います。この疾患は先天性の免疫不全症で、白皮症、小脳機能障害を合併します。マツリカがユウホのところに搬送されてきた時に重症の中耳炎を起こしていたのは免疫不全が理由です。また、洞窟から出ていけなかったのは小脳機能が障害されると歩行や運動に失調をきたすからです。
先天性の疾患というのはヒトでも動物でも起こります。当然フレンズでも起こりうると私は考えています。
茉莉花(ジャスミン)の花言葉は”柔和・温順”
ユウホ
医師・岬侑帆。作中ではっきりとは書きませんでしたが、ユウホは脳神経外科の専門で内視鏡操作を得意としています。ユウホは私が思う理想の医師の姿を模したキャラクターです。私もユウホのように患者さんから慕って、頼ってもらえる医師を目指したいものです。
ちなみに侑帆という名前は「誰かの船の帆に風を送り、航海を侑ける(たすける)」という意味を込めています。かなり考えて決めた名前ですので、個人的に非常に気に入っています。
☆医療の要素について
この作品ではなるべく一般の人も聞いたことはあるようなメジャーな疾患を扱うようにしました。ボツリヌス中毒、胸部外傷、結核、緑内障、糖尿病、帯状疱疹、脳梗塞、捻挫が登場しました。並べてみると感染症が3つも登場してしまっていますが、それだけ医療において感染症は重要な疾患群なのです。カルテ9で扱ったFCCSは筆者のオリジナルの疾患ですが、髄膜腫という実在する脳腫瘍が元ネタになっています。医療の専門知識の解説はなるべくわかりやすくなるよう努力したつもりですが、それでも読みにくく分かりづらい箇所は出てきてしまいました。一重に私の能力不足です。ごめんなさい。
☆舞台設定について
キョウシュウエリアの営業が凍結されてから10年後の世界が舞台になっています。なので「けものフレンズ1」よりもはるか前の時代です。ネクソン版の女王異変を2050年と勝手に設定し、これを基準に時系列を作成しました。
その他の設定は基本的に「けものフレンズ1」を下敷きにして作りました。
「けものフレンズ」の二次創作で避けては通れない要素が「サンドスター」という神秘的な物質の存在です。一応、科学の一分野である医学を扱っているために、こじつけ的な理屈は作りました。作中で博士がヒイラギに、フレンズがどのように生まれるのかを教えているシーンで顕著です。とはいえ、こじつけが過ぎると原作のイメージを壊してしまうため、細かいことは「現在でも解っていないのです」ということでご理解下さい。
☆各章タイトル
お気づきかもしれませんが、カルテ2からは「けものフレンズ」に関わりのある楽曲の歌詞から引用しています。
2:生き方は変えられない コウテイペンギンのキャラソン「200キロの旅路」
3:ケセラセラ みゆはん(スナネコ役)のアルバム曲「ケセラセラ」
4:まだまだ小さな一歩でも ジェンツーペンギンのキャラソン「Hello!アイドル」
5:グレイトフル・ジャーニー どうぶつビスケッツ・アルバム曲「ぐれーとじゃーにー」
6:嬉しいも楽しいも二つ分 フェネックのキャラソン「らいくあらいと」
7:ここにある今が道しるべ PPPアルバム曲「純情フリッパー」+けもフレ3テーマ曲「け・も・の・だ・も・の」
8:君の姿 星の記憶 Japari Cafe収録曲「けものパレード」
9:踏み出したさきは 1期ED 「僕のフレンド」
EP:何気ない日々を歩いて行こう PPPアルバム曲「わたしたちのストーリー」+舞台けものフレンズ「まくがあがる」
書きたいことも書きました。そろそろこの文章も終わりにしたいと思います。
この作品を最後まで読んでくれた読者の方々、本当にありがとうございました。読者の方々がいてくれたからこそ、作品を書き続けることが出来ました。いろんなことを勉強し、いろんなことを考えて書いたこの40万字は私の宝、もしくは黒歴史になることでしょう。でも今は満足です。ありがとうございました。
「けものフレンズ」という舞台、それに医療という分野はとても魅力的で、このプラットフォームで書きたい疾患や描きたいフレンズはまだまだあります。
次回はもっと読みやすく手頃な作品を作りたいです。
それでは。機会があれば、どこかの診察室でお会いしましょう。
小向涼太 拝
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