ロシワより愛をこめて
@stdnt
第1話
標的が、銃口の中を歩いている。
とらえたはずの標的であったが、突然ふりむいた!
ふりむきざまに発砲されて、銃口がぶれてゆく・・・
―1958年 冷戦さなかのポーランド―
マティーニをころがしている所に、声をかけられた。
「あなたのお名前は?」
相当の美女。予想通り、西側からのコンタクトだ。
「ボソド。ジェームズ・ボソド。」
名のってから、グラスを干した。
「ジェームズ。あなたがジェームズなのね。」
否定はしない。黙ってグラスを置く。
女はルームキーとともにさりげなくマイクロチップを手わたすと、立ち去った。
「上の部屋で待ってるわ。」
魅力的なお誘いだが、そうはいかない。
チップを東側へ届けなければ。
私の名前は「ボソド」。西側の名前じゃない。
ロシワより愛をこめて @stdnt
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