第352話 乙女ゲーム「エリカノーマ・ネクストジェネレーション」公式サイトオープン !

 侯爵家の珠玉の玉と秘された令嬢。

 病弱で侯爵領から出たことがなく、美しく愛らしく慈愛の心を持つ淑女の中の淑女、花の中の花。

 帝国一の美姫。

 侯爵令嬢ルチア姫。


 アニメーション


 五つくらいの男女の子供が木陰に隠れる。

 二人を呼ぶ声がする。


「姫様、諦めましょうよ。兄さんたちからは絶対に逃げられませんよ」

「いやよ。今日こそ冒険者登録するんだから。大丈夫。後で怒られればいいだけだもん」

「姫様は一度だけ怒られればいいですけど、僕はその後もう一度怒られるんですよ」

「わたくしも一緒に怒られてあげるわ」

「そしたら僕は三回怒られるじゃないですか」

「ね、声が遠くなったわ。今のうちに行くわよ」

「僕の話、聞いてます ? 」


 冒険者として、令嬢として成長していくヒロインのスチルが流れる。


「まあ、田舎育ちのご令嬢がはしゃいで、おかわいらしいこと」

「都会の作法をご存じないのですわ。わたくしたちが教えてさしあげなければいけませんわね」


 社交界デビューのために上洛した王都。

 待っていたのは貴婦人たちの洗礼。

 そして華やかな世界の陰に隠れて行われる犯罪。

 王城に王都に、悪の笑いがこだまする。


「許せない。罪のない人々の幸せを奪うなんて。その涙、わたくしが引き受けましょう。皆さん、覚悟はよろしくて ? やっておしまいなさい ! 」

「「 御意 ! 」」


スチル・字幕


 腕組みをして仁王立ちする食堂のおばちゃん。

「城の使用人のことならあたしに聞きな」


 書類を抱える敏腕文官。

「財務関係ですか ? ええ、お任せください。何でもお答えしますよ」


 クマさんの看板のパン屋の女将。

「街の噂くらいならいくらでも。あ、パンは買ってね」


 上位冒険者パーティーと名高い『ルーと素敵な仲間たち』。

 お呼びとあらば即、参上 !


アニメーション・CV


 黒髪の執事が優雅に頭を下げる。

 冒険者に姿を変えて剣を振るう。


 筆頭侍従・スケルシュ。

「我が命は姫様のもの。この剣にかけて必ずや姫様をお守りいたします」


 赤毛の冒険者が悪人を切って捨てる。

 執事姿の青年は静かに刺繍を仕上げる。


 次席侍従・カークス。

「この一刺し一刺しに姫様への想いを込めて」


 少年執事がピアノに向かう。


 末席侍従・カジマヤー。

「僕のこの音色で姫様をお慰め出来るなら」


 執務机の向こうで壮年の男性が微笑む。


 ギルドマスター・マルウィン。

「この老いらくの恋を、笑ってくれるかい」


 フォローキャラ二十名以上。

 豪華声優キャストでお送りするアニメーションと美麗スチル。

「エリカノーマ・ネクストジェネレーション」


 あなたは誰の手を取りますか。


 専属侍女・アンシア・シルヴァン。

「姫様ぁ、あたしのこと忘れてませんか ? 」


 ニコッとVサインする可憐なメイド。

 貴族服姿と冒険者装束のキャラクターが左右に分かれて立つ。


「今、ルチア姫の冒険が始まる」



ベナンダンティ・ネット


23: 名無しのベナンダンティ

 ちょっと、みた ? 公式サイト !


24: 名無しのベナンダンティ

 見た見た ! 笑いが止まらないっ !


25: ナラ

  エイヴァンが真っ赤なバラしょって花びら撒き散らして !


26: フロラシー

 ディードリッヒったら目に星が散ってた !


27: 名無しのベナンダンティ

 ギルマス、イケオジすぎっ ! マジ惚れちゃう。

 あ、あのゲーム内限定ね。


28: 名無しのベナンダンティ

  アンシアちゃん、カワイスッ !


29: 名無しのベナンダンティ

 ねえ、なんでみんな名前欄が空白なの ?


30: 名無しのベナンダンティ

 後であの二人の仕返しが怖いからにきまってるからじゃないか。


31: 名無しのベナンダンティ

 そう言うお前も空白だ。


32: 名無しのベナンダンティ

 うん、私も燃やされたくないもん。


33: 名無しのベナンダンティ

 それにしても、ビジュアル凄い再現率よね。


34: シシィ

 あたしっ、あたしが出てる ! クマさんの看板も同じ !

 実物よりかわいいっ !


35: 名無しのベナンダンティ

 東西南北、ありがとぉぉぉっっ !!


: 名無しの四神獣

 東西南北いうなっ !


36: 名無しのベナンダンティ

 わーおっ、まさかの東西南北のご降臨。

 ところで話題のご一行様はどうしたの ?


37: ナラ

 ルーちゃんとアル君は受験生だからしばらくネットには近寄らないって。

 エイヴァンたちはねえ・・・。


38: フロラシー

 ちょっとゲームどころじゃないらしいわ。

 仕事関係でトラブルがあるみたい。



「おい、ディー。これは何かの間違いか ? 」

「止めてください、兄さん。俺だって目を反らしていたいですよ」

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