イマジナリーフレンド

勝利だギューちゃん

第1話

「子供の頃には見えていた物が、大人になると見えなくなる」

というのは、リアルな世界でもよく耳にするお話・・・


小さい頃に行けた場所でも、大きくなるとその場所を忘れてしまい、

二度と行けなくなってしまう・・・

この話も、よく耳にする。


確かに大人になると、現実に直面をし、夢を見ている場合ではなくなってしまう。

よく言えば、現実の楽しい面も見えてくるのだろう・・・


でも、すぐに大人になれる者もいれば、いつまでたっても成りきれない者もいます。

私も、その後者のひとりで、未だに思考が子供のままで止まっている。

それなのに、胸だけは成長しているので、困っている。


もう女子高生になる私だが、私に見えるもの・・・

それは、イマジナリーフレンド、日本語にすると空想友達です。


3歳くらいまでの、小さい子供にはよく見られる傾向だけど、

女子高生もなって、見られるなんて、傍から見ればあぶないかもしれないですね。


イマジナリーフレンドとは、自分の中で作り上げた、文字通り空想上の友達と言うこと・・・

私以外の、誰にも見る事ができない、唯一無二の存在・・・


私のイマジナリーフレンド、それは姿も形も私にうりふたつ。

もし、他人に見る事が出来たら、双子の姉妹と間違えられることは確か・・・


もしそうなら、私がお姉ちゃん。妹とはとても仲がいい。

毎日、色々なことをして、遊んでいる。

好きなタレントの話、おしゃれの話、食べ物の話など、

まるで本当に、存在しているような気がする。


このイマジナリーフレンドは、私がまだ小さい頃かの長い付き合いです。

なので、一緒に大きくなってきました。


でも、最近になりだんだんと、ある疑問が膨らんできました。

それは、この子と自分が、あまりに似すぎている。

小さい頃は、「似てるね」としか、話をしなかったのが、最近になり膨らんできました。

でもそれを、彼女には訊かなかった。

大切な友達を、失いたくなかった。


でも、別れとは突然に訪れるもの・・・

ある日、彼女から「もう私とは会わないほうがいいわ」と、別れを告げられました。

それから程なくして、彼女は私の前から消えました。


いくら想像しても、思い浮かべても、彼女は出てきてくれませんでした。

変わりのイマジナリーフレンドなんていりませんし、それが出来なくなりました。


それから数年後、20歳になった私は成人式を迎えました。

今は、保育士を目指して、短大に通っています。


成人式の終わった夜、私は両親から衝撃の事実を伝えられました。

「もう、話してもいいだろ・・・」

父から、話を切り出して来ました。

「実は、お前には双子の妹がいいたんだ」

「双子の妹・・・」

初めて聞く事実に、私は驚きを隠せませんでした。

「あなたを、動揺させてくないので、隠してたの。

お父さんと、お母さんにとっても、辛い過去だし・・・」

「どういうこと・・・」

私は、両親に尋ねました。


「実はお前と妹は、双子で生まれたんだか、あの子は生まれてすぐに旅立ったんだ」

父の衝撃の告白に、私は茫然としました。

「すぐに話せば、あなたの生活にも支障をきたすわ。

なので、成人式の日に打ち明けようとしたの・・・」

母が続けます。


それからの事は、よく覚えていません。

でも、ひとつわかったことがあります。

私のかつての、イマジナリーフレンド・・・

それは、妹であること・・・

妹の魂が、私の前にだけあらわれて、友達になってくれたこと・・・

妹も寂しかったんだな・・・と、初めて理解できました。


私の前から去ったのは、私の事を心配してくれた上での事も、納得が出来ました。


確かに、子供のままでいるのは楽しい半面、逆に辛くもあります。

妹の想いを無にすることなく、私は生きていこうと思います。


ただひとつ、妹には名前がありませんでした。

なので、私が付けました。

「アリス」と・・・

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イマジナリーフレンド 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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