ノー・ライアー・ゲーム

青空ひかり

プロローグ 晩夏


 僕の通う私立青陵高校では、どこからかミンミンと蝉の鳴く声が淡々と聞こえてきた。


 どのクラスもすでに授業は終了し、現在は放課後。


 そんな放課後に、場所は体育館裏。

 

 普段のこの時間帯であれば、誰もいないはずのこの場所には二つの姿があった。




「……ずっと前から裕太くんのことが好きでした。」


 彼女の淡く透き通るような声が体育館裏で響く。その顔は耳まで真っ赤に染まり緊張と不安でだろうか、少し涙目になっている。


「……えっと、ほ、ほんとに僕なんかでいいの?」


 内心、心臓が飛び出るほどに緊張していたが、なんとかそれを表に出さずに、少し言い淀みながらもそう返した。


「……うん。裕太くんがいいんだよ」


 彼女は恥ずかしそうに頬を掻きながら笑った。

 その後、少しの沈黙が場を支配した。僕が何を言えばいいのか動揺していると、彼女がおもむろに言う。彼女はその大きな瞳で上目遣いに僕を見上げ、一歩、近づいてきた。ほのかに甘い香りが漂い、心臓の鼓動がドクドクと早くなる。意を決して、思いを伝えるべく僕—成瀬裕太—は口をひらいた。



「……その、僕も如月さんのことが———」



 僕はそこで言い淀んで言葉を紡いだ

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