第13話新しい厨二病な仲間が増えました

今俺たちがいるのは宿だ、木造建物で5階建、1階には食堂があり、2階には風呂まであるらしい。



「エリシア、今日は彼氏連れか?」



俺たちが宿の受付の前を通り過ぎようとした時、少しぽっちゃりなおばさんが声をかけて来た。



「ち、違うわよ!宿がないから泊まらせてあげるだけなんだから」



「そうなのかな?まぁ、とにかく、夜はうるさくしないようにね」



「し、しないわよ、そんなこと!」



エリシアは少し顔を赤らめて、否定した。



「それと、あまり気にしないことだよ」



受付近くの椅子に座っている人やテーブルで向かい合って話をしている人たちがこちらに向けて冷たい目線を放っていた、それと耳打ちで何か話してたりもしている。



「気にしてないわ、もう慣れたもんだし」



「そうかい、彼氏さんもエリシアのこと支えてやってくれよ」



「わかりました」



「だから、彼氏じゃないってー、竜二も少しは否定してよ」



エリシアは気にしてないが、なんでこんなに人がエリシアを嫌うんだ、王女様は嫌われるのか?ギルドでのことといい、やっぱり知らないといけない気がする。そのうち聞いてみることにする。


俺たちは上へと階段で上がり、4階の部屋へと入った。その部屋はベットが1つあり、テーブルと椅子が1つ、それと街が見渡せる窓があるくらいだ、部屋広さは日本のホテルとあまり変わりはしない。ベットの上には大量のぬいぐるみの山がある。



「エリシア、ちょっと気になること言っていいか?」



「なによ」



「そのベットの上にあるのはなんだ?」



俺は指をさし、ベッドの上のぬいぐるみに注目した。



「ぬいぐるみがどうしたのよ!あげないわよ」



「ちげーよ、欲しくないわ!なんか可愛いなって」



「急になによ!私に惚れたなんて言わないでよね」



「だから違うって、街では堂々としていて、かっこよくて、だけど家では女の子らしいっていうか、エリシアもそんな姿があったんだな」



「失礼ね、私だって家では自由でありたいもの、それとぬいぐるみがあるほうが落ち着くし、それより竜二、ドアの前から一歩も歩いてないけど、この部屋は自由に使っていいから、気楽にね」



部屋に入ってからエリシアはベットに座り、俺はドアの前から歩けずにいる。



「そうだね...」



俺は前へと進み、エリシアの隣へ腰掛ける。


だが、俺の心拍数は上がる一方だ、女の子と同じ部屋にいるのだから緊張してしまうのも仕方ない。

この際だから気になっていることを聞いて見ることにする。エリシアへの悪評についてを。



「あのさ、エリシア、別に答えたくなかったら答えなくていいんだが、街の人たちがなぜエリシアのことを嫌っているかだ」



「あぁそれね、やっぱり気になるよね...話すわ、私はね2年前、当時14歳だった時に魔王軍の一族にこの国を襲われたことがあってね、国民からは尊敬されて、崇められたりもしていた、だけど私は逃げてしまったの、私は怖くて怖くてどこまでもどこまでも走って走って、最後まで残って信じてくれている国民を導かないといけなかったのにね、数日後、私は意を決して国へ戻って来たの、だけど街は崩壊していて、人は半数しか居なくなっていた」



「そんな無茶な!14歳の子が国民を導くなんて荷が重すぎる、そんなの怖いに決まっている!」



「私はそんなのじゃない、ただ国民を家族を私は裏切ったんだ、それなのにパパとママはとても心配してくれていて、泣いてくれた」



「親は子供の心配をして当然だぞ、俺の親は違かったがな」



「私のせいで、パパとママも国民たちから批判をくらい、私も国民から蔑むような目で見られるようになったんだ」



「俺が言えたことではないが、国民はエリシアをどこかで許していると思うぞ、ギルドの受付の人や料理屋の店主、宿屋のおばさん、俺はなんも知らないしわからないでも、その人らはエリシアを許しているじゃないか?」



「あの人らは私に気軽に接してくれて優しい人」



「もっと国民と話せば分かり合えると思う、いつになっても、諦めずに話し合えさえすればいつかきっと、それで無理だったら他を考えればいいんだし」


「そうかな...」



「あぁ」



エリシアは少し嬉しそうに微笑んだ。



俺は部屋に取り付けられているトイレに行こうと立ち上がろうとした時ドアから



「トン、トン」



とドアをノックする音が聞こえて来た。



「誰か来たみたいね」



「俺が出てくるよ」



「お願い」



俺はドアノブに手をかけ、開いた。



そこに立っていたのは、黒マントを羽織り、とんがっている黒い帽子、黒髪に左目には赤い眼帯をつけており、右目は黄色い目、それと両手には赤い包帯が巻いてある。顔立ちは少し幼げではあるがとても可愛い。



「我が名はアリシャ!闇魔法を司り、この世の全てを闇へと導くものだ、あまりの強大さゆえに今は使えないがな、私とともにパーティーを組まないか?勇者様!」



俺はすぐにドアを閉めた。



「竜二、誰だったの?」



「いや、なんか間違えて来てしまったみたい」



ドアが思い切り開けられて中に入られてしまった。



「違うわーー!我が名はアリシャ、私は勇者様とパーティーを組むために来たのだ」



「なぜこの場所がわかった、つけて来たのか?」



「つけて来てなにが悪い、私は勇者様とパーティーが組みたいんじゃー!」



「いきなりなんだよお前はーー!常識ってものがないのか!」



アリシャと名乗る少女は、「こほん」と一息ついて



「これはすまぬ、では本題に入らせてもらう、勇者様、私とパーティーを組まないか?」



切り替えの早さは一人前みたいだ。



「だってよエリシアどうする?」



俺は振り向きエリシアに確認を取る。



「私は構わないわよ、一人でも多いと心強いじゃない」



「エリシアがそういうなら構わないが、アリシャさんは他の人たちとパーティー組んでないのか?」



「アリシャで構わぬ、組んでたんだ、だけどこの国でパーティーを組んでクエストを受けるとあやつらは全て私に任せて後衛に下がっているのだ、それにクエスト行こうと誘っても遊びたいから飲みたいからって言って断るんよ、その時、勇者様が来たと聞いて、私は勇者様とパーティーを組みたいと思った、だから私はそのパーティーに嫌気がさして抜けて来たのだよ」



この国では多くの冒険者は最低限しか働かなかったんだっけ、そしたら嫌気がさすのもわかる。



「それはご苦労なことに、これからは色々なクエストを受けよう、よろしくなアリシャ」



「嬉しいです、よろしくお願いです、えーと」



「俺は竜二であっちに座っているのがエリシアだ」



「竜二、エリシア、これからよろしくです」



エリシアが立ち上がり、ドアに向かって歩いて来た。



「よろしくね、アリシャ」



エリシアとアリシャは厚く手を交わした。

その様子を見るととても二人は嬉しそうだ。



「それと引っ張らないでいただけないでしょうか?」



「あぁ、これかすまんすまん」



アリシャの左目についてある眼帯を引っ張って遊んでいた。ちょっと楽しい。



「すまんと言っておきながらまだっっ、いとー、痛いんじゃー、やめろ!左目が開放するであろうが!」



「アリシャって実は痛々しい人?」



見た目も相まってエリシアが口を挟む



「ちゃうもん、痛々しい人ちゃうもん!私はこの力が開放してしまうといけないから仕方なくなんよー」



アリシャが少し落ち込んでるのがわかる。



「そういう設定だって理解した」



実は俺も中学の時は厨二病を拗らせて、クラスで浮かれていたのを思い出す、だからアリシャの気持ちもよく理解できる。



「私も理解したわ」



「設定じゃないんやってー、この力は本物なんよ!信じてよー」



「わかったわ信じるわ、それよりあなたは帰らなくていいの?もう暗くなって来ているわよ」



今はもう真っ暗で月明かりがベッドを照らしている。

エリシアの適当感が否めない。



「私、家ないんよ、だから泊まらせてくれないか?」



「別にいいけど、アリシャはこれまでずっとどこで暮らしていたのよ」



「一緒にパーティーを組んでいた人たちの家を転々と回って暮らしていたのだ、ろくに金もなかったからな」



「そこ誇るところではないと思うのだけど、アリシャ、この部屋で泊まらしてあげる」



「エリシアありがとー、感謝する、また野宿暮らしのあの頃に戻るのはやだったのでな」



「壮絶な暮らしをしていたのね」



「ま、待ってよこの部屋に三人で寝れるのかよ!」



「寝れるわよ、ベッドも三人は寝れるくらいスペースはあるし、何か不満?」



蔑んだ目でこちらを見てくるので仕方なく承諾した。



「いいえ、不満じゃないよ」



こうして俺、エリシア、アリシャとパーティーを組むことになった。そして、同じ部屋、同じベットで三人で寝ることになったのだった。




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※違和感や不思議に思うことがあれば感想で教えてほしいです。これからも読んでいただけたら幸いです。

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