見下ろす夏に、秋思う

HaやCa

第1話

「見下ろす夏に、秋思う」


 ずっと夢だったことがついに叶った。私には絶対できないって思ってたけど、そんな弱い気持ちもいつしか消えていた。努力してきてよかった。今までの過去を思うと、なんだか涙が止まらない。どうしてかな。きっと、嬉しいんだ。


 イラストを描きはじめたのは、私が小学四年生のころ。隣の席の男子に影響されたから。

授業中も休み時間も、その子はずっと描き続けていた。

「変なヤツ」

 クラスメイトは気持ちを隠しはしなかった。


 時は流れ、私はその子と道端でばったり会った。彼も私のことを覚えていたみたいで、なんだか気恥ずかしそうにはにかむ。目を隠すように黒髪がそよぐ。夏は入道雲の下にあった。


 それがきっかけになり、私たちは何度も会うようになった。最初は私が誘っていたのに、気づけば彼からのラインが入っている。ピコーンと鳴るその音がたまらなく好きになった。


 8月の花火大会、うきうきしながら私はラインを送った。数秒後に返ってきたメッセージは見慣れたスタンプだった。代り映えしないソイツが私をもやもやさせた。


 人を好きになることを知る。それはどういう意味なのだろう、問いかける相手が欲しい。

難しい理屈が聞きたいんじゃない。ただあなたが考えていることを聞かせてください。高く屹立する入道雲のなかに雷鳴がある。

 夕立はもうすぐ降るだろう。

「はやく帰ろう」

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見下ろす夏に、秋思う HaやCa @aiueoaiueo0098

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