第三章 5 feat.cooler
5
「き、貴様っ!我が同胞に何をしたっ!」
「何を?ふふ……答えると思って?……ゴーレムなんて生かすも殺すも私の勝手よ」
「このクソアマがっ!……うぐっ!」
男性ゴーレムのクソアマ発言に内心で激しく同意していたら、男性ゴーレムが胸を抑えて苦しみ始めた。
確かあの場所は……そうだ。男性ゴーレムの不思議な感じのする場所だ。
「言ったでしょう?生かすも殺すも私の勝手だと……ふざけた口聞いてんじゃねぇよクズが!」
うわぁー、何あのキチガイ。ユナさんヒステリック過ぎてヤバい。
しかし、自分が手を加えていないゴーレムにも干渉できるとは……。
一瞬で不思議な力が感じられなくなった女性ゴーレムと違い、苦しみつつも未だに抵抗出来てるあたりまだ救いがなくも無いが、状況は最悪に近いと言える。
……これは、僕が何とかするしかない。僕から意識が逸れた一瞬の隙をつき、《隠密》と《身体強化》を発動してユナさん……クソアマの後ろに回り込んだ僕は、発動媒体だと思われる、長杖の先端の赤い石を見据えて攻撃する。
「スキル《飛斬》」
脇差しから放たれた飛ぶ斬撃は、確かに赤い石に命中してそれを砕いた――が、
「そこか!勇者ぁ!」
クソアマは勢いよく振り向き、長杖を信じられない速度で僕に当てに来る。僕は咄嗟に刀を交差させてガードし、次の瞬間。
長杖と二刀が交わると共に長杖から大きな衝撃波が発せられ、僕は吹き飛ばされた。
幸い、《身体強化》を発動していたのでまだ戦闘を継続できる程度の傷しか負っていないが、今のはとんでもない威力だった。
あんな機能が付いててゴーレムの操作まで出来るって、激レアどころじゃない価値の魔道具だよな……っ!
「え……?」
「ふふっ……あははっ!見失った時は一瞬ヒヤッとしたけど、ただの装飾の石を破壊した挙句に吹き飛ばされて地を這うなんて……ホント無様。あはっ!」
男性ゴーレムはまだ苦しみ続けてる……けどその動きは弱々しく、今にも事切れそうだ。
あの赤い石は……ただの囮だったってことか……。じゃあどこを破壊すればいいんだろうか。
「あなた今、どこを破壊すれば良いとか考えてるでしょ?それがそもそも間違ってるの。もうあなたに勝ち目は無い。さっき私を狙わなかった時点であなたの勝機はついえたのよ。どお?悔しい?勇者なのに女の子に負けてさぁ」
とことん性格の悪い奴だ。しかし僕に勝ち目がないと決まった訳では無い。勝負はこれからだ。何度でもその長杖を破壊してやる。
と、立ち上がろうとした次の瞬間、
――グサリ
「――っっ!」
胸からは血塗られた銀色の刃が見えていて――後ろには事切れたはずの女性ゴーレムがいた。
「かハッ……!」
「生かすも殺すも……生き返らすも私の勝手よ?……ふふっ、ふふふふ、あははははっ!」
こいつ……どうしてこんなにひねくれたんだろうな――薄れゆく意識の中、僕はそんなことを考え、
「助けに来たわよ、ニム」
頼もしい声を聞いた。
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