第417話
「とりあえずは・・・」
俺は地上の様子を確認しながら、アッテンテーターの上空を翔けていた。
(あんなに巨大な城だったんだな・・・)
背には先程迄いた城があり、その規模はサンクテュエール城の5倍近いのだった。
ただ、これはフェルトからも説明を受けていた事で、アッテンテーターでは貴族はある程度高貴な者で無ければ、自らの屋敷を建てる事が許されず、下位の者達は城の中に有る指定の居住区で、監視生活を送っているとの事だった。
(然も、一般国民も家屋の規模や、年収に応じて掛けれる上限金額も国に管理されているらしいからな)
その為、アッテンテーターの城下街は城と比べて4:6程度の比率で、若干狭く感じた。
「バドーとの合流も急ぎたいが・・・、ん?」
俺の帰りを待っているバドーの事が頭を過ぎったが、視線の先。
城下街の先に巨大な一団が見えたのだった。
「開戦準備は万全って事か・・・」
一団はアッテンテーター軍らしく、地中に埋め込んでいる大砲を、リフトで地上へと持ち上げていた。
「大砲・・・、ん?」
大砲の存在自体はフェルトから聞き出していたが、其の砲門数十門全てが、俺の方へと向いていた。
「れ、連絡済みなのか・・・?」
あまりに迅速な対応に、流石に一瞬唖然としてしまった俺へと・・・。
「撃てぇーーー‼︎」
「・・・っ⁈」
その姿は確認出来なかったが、指揮官らしき男の号令が掛かり、発射された弾丸が、大気を弾き飛ばす様な低く重い轟音を響かせ、俺へと一斉に飛んで来た。
「大楯ムウゥゥゥーーー‼︎」
襲い掛かる無数の弾丸に、俺は射程距離を測る間も無かった為、魔力全開で地上が見えなくなる程大量の、漆黒の大楯を詠唱した。
「・・・っ」
漆黒の大楯に無数の弾丸が着弾し、鈍い低音が連続で響き渡る。
(マズイな・・・)
正直なところ、漆黒の大楯は魔法やブレスなどには強いが、弾丸や斬撃などの直接攻撃には余り有効とはいえず、このまま相手の攻勢が続くと、何処迄持ち堪えられるか自信が持てなかった。
(味方が居ないのは好都合・・・、此方からも・・・)
俺は第一陣の射撃が収まるのを待ち・・・。
「雨ァァァ‼︎」
轟音が途切れた瞬間に魔法を詠唱すると、地上のアッテンテーター軍へと漆黒の雨が降り注いだ。
「な、何だ⁈」
「毒物か⁈」
「あ、あぁぁーーー‼︎」
漆黒の雨でその身を濡らし、鮮血を滴らせる陰惨な光景に、阿鼻叫喚の悲鳴をあげるアッテンテーター軍人の兵士達。
「落ち着け‼︎盾を出すんだ‼︎」
「へぇ・・・」
流石というべきか、指揮官の男は混乱する兵士達へと一喝し、大砲の入っていた地下から盾を取り出させた。
「空に向かって構える者と、大砲の弾をセットする者、其々分担せよ‼︎」
指揮官の男はアイテムポーチから鎖帷子を取り出し、其れを傘代わりにして、此方の様子を伺っていた。
「ふ〜ん・・・」
明らかに盾の方が雨を防ぐのに優れているが、状況の確認と次の指揮の為だろう。
そんな男の姿勢に、感心する様に鼻を鳴らしたのも一瞬。
「まぁ・・・、無駄だけどっ‼︎」
魔力を一層強く注ぐと、漆黒の雨は小雨から大雨へと変わり・・・。
「な・・・?」
「た、盾が溶けている⁈」
「うわぁぁぁ‼︎」
通常なら鋼鉄を溶かす程の威力は無い漆黒の雨だったが、現在、闇の支配者よりの殲滅の黙示録を発動中の為、漆黒の雨の威力はかなり上がっていて、鋼鉄をも溶かす程の威力となっているのだった。
「ど、どうれば⁈」
「盾を二枚重ねにして・・・」
「それよりも、地下に潜っては・・・」
頭上の盾が溶け、一時的な避難も終了した事で、再び混乱し始めたアッテンテーター軍の兵士達。
「くっ、こんな事が・・・‼︎」
「お、おいっ、さっさと彼奴を撃ち落とせば・・・」
「そ、そうか‼︎」
最善の策と信じて疑っていないのだろう。
俺への攻撃を再開する策を選んだ兵士達は、大砲の発射トリガーへと駆け・・・。
「ま、待・・・」
「此れで・・・‼︎」
「落ちろ‼︎」
指揮官の男の制止しようとした声を、掻き消す様に怒号をあげ、大砲のトリガーを引き、制御装置が反応した・・・、刹那。
「・・・⁈」
「・・・っ‼︎」
漆黒の雨によって、其の砲身が溶けて変形していた大砲は、弾丸の発射される音よりも、更に歪な轟音を響かせ大爆発を起こし、兵士達は其の悲鳴すら飲み込まれ散っていったのだった。
「ぐ・・・」
「た、隊長・・・」
「どうす・・・、っ」
どうやら先程の爆発で指揮官も逝ったらしく、生き残った兵士達もどうして良いか判断出来ず、立ち尽くしていた。
(回復するのも忘れる位、追い込めてるか・・・)
俺は自身の戦果に納得し、最後の詰めに入る事にした。
(バドーを何時迄も待たせる訳にはいかないしな)
「とりあえず・・・」
俺は砕け散った大砲の残骸や、爆発によって抉れた大地、何より漆黒の雨と鮮血で赤黒く汚れた兵士達。
其れ等を全て流す為、漆黒の翼に魔力を注ぎ、地上へと急降下し翔けた。
「こ、此奴・・・⁈」
「これ以上何を・・・」
「わっ、わあぁぁぁーーーぁぁぁ‼︎」
指揮官を失った兵士達の中には、迫り来る俺へと恐怖し、逃げ出す者もいたが・・・。
「終焉への蒼き血潮‼︎」
俺は構わず極大の魔法陣を詠唱し、地獄絵図を広げていた地上のあらゆるものを、大海嘯で流したのだった。
「お、おい・・・」
「ぐ・・・」
「ぅぅぅ・・・」
僅かに生き残った兵士達は、どうしょうもない様に呟きを漏らしていた。
(少なくとも此れで侵攻時、相手側の迎撃の戦力を減らす事は出来ただろう)
俺は結果に納得し、バドー達の待つ国境付近へと翔け出したのだった。
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