第332話
「申し訳ありませんでした」
「構わん。ディアについては司に決定権が有る」
「ははあ〜」
此処はサンクテュエール城謁見の間。
俺は国王にセーリオとの会談の内容の報告と、狐の獣人の王から国王宛の封書を届けに来ていた。
「・・・然しな」
「・・・?」
「司よ」
「はい」
「会談で此の封書の内容は?」
「先程の報告以外に私の知り得る内容は有りません」
「そうか・・・」
どうやら封書には会談では語られなかった内容も書いてあるらしかったが、国王の様子からは其れの良し悪しは判断出来なかった。
「うむ、分かった」
「・・・」
「此の内容について此方で検討しよう」
「は・・・」
「うむ。心配するな、悪い様にはせぬ」
「ははあ〜」
国王が判断をすると言っている以上、俺に発言権は無い。
俺は国王に対して、従順な姿勢を示したのだった。
「という事だ」
「そう・・・、分かったわ」
此処はリアタフテ家屋敷の執務室。
俺は王都の国王との謁見の内容をローズに報告したのだった。
「どうするのぉ、ローズちゃん?」
「勿論判断は司に任せるわ。けど・・・」
「ん?あぁ・・・」
「態々、捨て駒にされる必要も無いだろう」
「グラン様。そうですね」
今回、執務室には俺とローズ以外にもリールとグランも居たのだった。
そして・・・。
「それで良いな、ディア?」
「・・・」
俺が渡した狐の獣人の王、つまりは自身の叔母からの手紙を無言で読んでいるディア。
内容は気になったが、とりあえずは本人に先に読ませてやる事にしたのだった。
「どうだ、何て書いてあるんだ?」
「・・・うっさいっ」
「・・・」
「ディアちゃん?」
「まま・・・、ちょっとまって」
「そうねぇ〜」
「・・・」
納得はいかないがディアの対応は、俺とリールの人徳の差というものを表している様だった。
「・・・ふぅ〜」
「・・・」
「んっ」
ディアは手紙を読み終えると大きく息を吐き、手紙を俺の方へと差し出して来たのだった。
「お、おぉ・・・。良いのか?」
「べつにぃ・・・」
「じゃあ・・・」
一応、俺は無理矢理では無いという事を態度で示す様に、ディアへと確認をして手紙を受け取ったのだった。
「こ、れ・・・、は?」
「どうしたの、司?」
「い、いやぁ・・・」
「・・・」
「おい、ディア」
「なに?」
「何じゃ無いよ。何も書いて無いじゃないか?」
ディアから渡された手紙に目を通してみたが、其処には何も書いておらず、汚れ一つ無い白紙なのだった。
「かいてるもん」
「・・・人族には読めないって事か?」
「さあ?」
「ディア」
「・・・」
「ディアちゃん、何て書いてあったのぉ?」
「まま、ひじゅのことだったよ」
「ひじゅ・・・?秘術か?」
「そっ」
秘術って事はノイスデーテに伝わるという魔法の事だろう。
「だが、何故?」
「とりにこいって」
「取りに?魔法を覚えろって事か?」
「ほかになにがあるのっ?」
「あ、あぁ・・・。・・・って、おいっ⁈」
「ほお、其れは・・・」
王からディアへの手紙は、ノイスデーテに伝わる魔法をディアに覚える様にというもの。
俺は其の内容に驚きが隠せないのだった。
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