第224話
「・・・縫ッ‼︎」
「・・・」
眼下のエルマーナに向かい、漆黒の針を撃ち下ろすと、奴はマヒアラーティゴで其れを迎え撃った。
「ちっ・・・、衣‼︎」
「・・・」
再び俺を取り囲んだ炎の弾。
俺は今度は闇の衣で其れを払った。
「・・・っ」
「・・・」
掻き消された炎の残す、不快な熱に俺は眉間に皺を刻んだ。
(味方の合流はまだか・・・)
ぶつかり合うサンクテュエールとディシプルの軍勢に眼を向けると、サンクテュエール軍の多くは当然と言えば当然だが、城方面へと流れていた。
(どうする?此処は一度逃げるか?)
俺は雨による地上に居る敵の被害が、狙っていたもので無い事を確認し、此の場に留まる事を躊躇した。
(でも、何故・・・?)
雨は地上の連中も浴びていた筈なのに・・・?
「とりあえず・・・、雨‼︎」
「・・・」
俺は再び上空から地上に向け、漆黒の雨を降らせてみた・・・、すると。
「な・・・」
「・・・」
仮面の男を守る様に炎を纏った尾で雨を振り払うエルマーナ。
そして、他のマントを纏った連中も同じ様に、炎の尾で雨を払っていた。
(彼奴等・・・、全員狐の獣人だったのかっ‼︎)
「此奴等を本体と合流させるのは・・・」
「・・・」
「剣ゥーーー‼︎」
「・・・」
俺は闇の剣を生み出し地上の敵へと降らせた。
其れ等を躱し、俺へと炎を弾で反撃してくる狐の獣人達。
「・・・っ、静寂に潜む死神よりの誘い」
「・・・っ」
其れを翼に力を込め上空へと避け、仮面の男へと不可視の一撃を放つ。
「・・・くそっ‼︎」
「・・・」
回復が間に合わず、未だ地面へと膝をついていた仮面の男は、エルマーナによって抱えられ其れを間一髪避けた。
「だが・・・」
「・・・っ⁈」
再び俺を取り囲む炎の弾を、地上へと急降下し躱し、自身の爪先が地面に触れた・・・、刹那。
「狩人達の狂想曲フルバーストウゥゥゥーーー‼︎」
俺の前方に広がる九十九門の魔法陣。
其処から生まれ出でて、戦場を駆ける闇の狼達。
「っっっ‼︎」
「っーーー‼︎」
狐の獣人達は1匹目を炎を纏った尾で払っても、2匹目3匹目と襲い掛かる闇の狼達に、圧殺されていった。
「・・・っ、ふぅ〜」
俺は一瞬の間に、アイテムポーチから魔力回復薬を取り出し、飲み干したのだった。
(敵は・・・、良しっ)
眼前の敵を確認すると、其の数は仮面の男とエルマーナを含めても、5人に迄減っていた。
「行く・・・、っ⁈」
「・・・」
魔力を流し込んでいた耳に、微かに聞こえて来た背後からの違和感を感じる音。
俺は其れが何か確認する事はせず、翼に力を込め上空へと急上昇した。
「勘の良い事ですな」
「・・・ルグーン、貴様ぁ‼︎」
「ふふ、嫌われたものですねえ?」
「・・・」
俺が居た位置の背後。
ルグーンが数十の増援を引き連れ、現れていた。
(ちっ・・・、折角減らしたのにな)
「さて、どういたしましょう?」
「お前達が死して其の罪を償ってくれれば良いさ」
「ふふ、非道いお方だ」
「・・・」
(どうする・・・)
「・・・っ⁈」
「な⁈」
眼下のルグーン達を見据える俺の耳を劈く様に響き渡った轟音。
そして・・・。
「な、何が・・・」
ルグーン達へと襲い掛かる、大地を裂いてしまいそうな衝撃波。
ルグーンは自ら詠唱した魔法陣の中へと、隠れて其れを避けたが、狐の獣人達は全員其れに飲み込まれ、吹き飛ばされていた。
「ど、どうい・・・」
「司様っ‼︎」
「・・・っ⁈・・・ア、アナスタシア‼︎」
「すいません。遅くなりましたっ」
衝撃波の飛んで来た先。
其処には、自らの身体の倍は有りそうな愛剣の大剣を地面へと突き刺したアナスタシアが立っていた。
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