第127話
シャリテ商会を後にし学院へとやって来た俺達。
俺は再び1人で校舎の中へと来ていた。
とりあえず今回の任務に掛かる期間がどの程度になるか分からないので、学院長室のデリジャンの下へ報告しに来た。
デリジャンは陛下よりの仕事ならと、精一杯やってみる様にと言ってくれた。
「そう言えば、学院長ってお兄さんが居たんですね?」
「おお、やはり兄にも会ったか。どうじゃ、息災であったか?」
「ええ、元気そうでしたよ。そう言えば・・・」
「ん?どうかしたのか?」
「はい。陛下より、国家認定魔導士に任命して頂きまして」
「うむ、まあ当然じゃのお」
国家認定魔導士って、そんな簡単に貰える資格だったのか?
「それで、グリモワール様から権利に関しては、学院長に教えて貰う様に言われたのですけど」
「うむ、分かった。お主が任務より戻ったら、補習の内容に組み込む事にするかのお」
「はい、ありがとうございます」
「うむ、とにかく無茶はせず、お主とフレーシュの身の安全を第一に考えるのじゃぞ」
「はい、分かりました」
そうして学院長室を後にし、ザックシール研究室に向かった。
研究室の中では丁度フェルトがルーナの整備をしていて、聞くともう終わる所と答えた。
「そう言えば、フェルト」
「どうかした?」
「ああ、ちょっと頼みたい物があるんだが」
「ふふ、何かしら?」
「ああ、ルーナの新しい得物なんだが」
「あら?今の物に不満でもあるの?」
「・・・」
「いや、そろそろ新しいダンジョンが完成するだろう。ダンジョンの中だと今、使用している銃だと威力が強すぎるんだよなぁ」
「・・・ふふ、ふふふ」
「ん?どうした?」
俺からの依頼に、何がツボに入ったのかは分からないが、突然笑い出したフェルト。
一頻り笑った後に、かなり失礼な理由を告げてきた。
「ふふ、ごめんなさい。だって、急に当たり前の事を言い出すから」
「いや、当たり前って・・・」
「そんな計画的な準備を司が出来ると思わないじゃない?」
「その通りですね」
「ふふ、ふふふ」
「・・・」
フェルトの失礼な発言に、間髪入れずに同意したルーナ。
再びツボにはまるフェルトに、俺は無言の抵抗しか出来なかった。
「ふふ、分かったわ。何かリクエストは有るかしら?」
「・・・」
「ふふ、拗ねないの」
「・・・いや、まあ特別には無い。それに期間も無いしな」
「そう、なら此方で仕上げておくわ」
「ああ、助かる」
「でも、得物ねぇ」
「ん?」
「いいえ、色気の無い物頼むわねぇ」
「色気って・・・」
「ふふ、色気はともかく、もっと楽しい物を依頼して欲しいわね」
「そう言われてもなぁ・・・」
確かにフェルトとの関係の始まりは、人工魔流脈の作製に向けてのルーナの開発の協力だったんだよな。
そう考えるとフェルトに兵器ばかり作って貰ってるのは、違和感はあるのかなぁ・・・。
「じゃあ、こたつ作ってくれよ」
「こたつ?何かしら、それ?」
「ああ、それはなぁ・・・」
俺は冬になり、此方の世界ではまだお目に掛かった事の無い物を依頼した。
フェルトは最初、制御装置により室温は調整されているのに、何の意味があるのか不思議そうな顔をしていたが、結局、不承不承依頼は受けてくれた。
そうして、ルーナの整備が終わると同時に俺とルーナは馬車に戻り、今夜の野営予定の場所に移動するのだった。
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