第103話
翌日の朝、城から迎えに来た衛兵に連れられ、俺とルーナは城へと来ていた。
俺は衛兵より手続きを済ませて来るので、入り口で待つ様に言われ辺りを見渡すのだった。
城は豪華絢爛にして絢爛豪華と、訳の分からない表現で形容したくなる程、人生の中で見たどの建物よりも壮大な外見に、煌びやかな内装が広がっていた。
「・・・おぉ〜」
「司様、お上りさん?」
「し、失礼なっ・・・、ただ凄いなぁ」
「ふっ、ふふ」
「な⁈ルーナ」
「ふふ、すいません・・・、ふふふ」
「・・・」
そんなに俺は城の豪華さに驚いて、間の抜けた顔をしていたのだろうか?
ルーナは初めて見る笑いを、どうにも抑える事が出来ない様だった。
「あれ、どうしましたの?」
「あ、あぁ、ミニョンか?」
「ええ、おはようございますわっ」
「ああ、おはよう」
「ふ、ふふ、・・・おはようございます」
「は、はぁ・・・?」
「・・・」
俺達に続いて登城したミニョン。
彼女も初めて見るルーナの様子に若干引いていた。
「あれ、フレーシュは?」
「むう〜、ですわっ」
「ん?」
俺が見当たらないミニョンのメイドの確認してみると、彼女は頰を膨らませた。
「あの娘は此方に戻っている間は休みですわっ。送迎は家の者がやってくれましたわっ」
「そ、そうか・・・」
早口で聞いてない送迎の係まで教えてくれたミニョン。
また喧嘩でもしたのかと、少し心配になったがそんな俺にミニョンは、ワガママ娘からは解放されたいと休みの申し出が有ったと教えてくれた。
(なるほどね・・・)
その後俺達の下へ戻って来た衛兵の案内で、城内を奥へと進んで行った。
衛兵の案内の下進んで行った先、一際堂々とし華やかな扉があった。
其の扉を脇にいた複数の衛兵達が開けると、両の壁際に複数の正装に身を包んだ人間が並んでおり、其の先、丁度俺達の視線の先、一段高い位置に2人の男が豪華な作りの座椅子、王座に腰を下ろしていた。
(あれが国王だろうな・・・)
俺達を案内して来た衛兵が横に移動し、俺達の前を開け一礼をしたのを合図に、先へと進み国王達の声が聞こえる位の位置で膝をつき、平身低頭の構えをとった。
「構わん、面をあげよ」
「ははあ〜」
この男が国王なのだろう。
壮年を少し過ぎた辺りだろう、金色の髪をオールバックに流し、頰には薄っすらと皺が見えている。
然し王座に座る姿は高貴な者の放つ、威風堂々としたオーラを感じた。
「ふむ・・・」
俺へと値踏みする様な視線を向け、静かに名をと尋ねてきた。
「はっ、リアタフテ家次期当主候補ローズ=リアタフテの婚約者、真田司と申します」
「そうか、私がサンクテュエール国、国王ロワ27世である」
国王はロワ27世と名乗り、隣に居るもう1人の男を見た。
その男は、短く切り揃え整った金髪に、鋭い眼光は蒼く輝きを放ち、座って居ても分かる程の長身でシャープな体型をしており、この国の王太子でモナルクと名乗った。
「真田司よ、今回のフェーブル反乱とディシプル侵攻に際しての、お主の働き実に見事であった。褒めてつかわす」
「ははあ〜、有難き幸せ」
「後ろに控えておるのは、デュックの娘か?」
「ご機嫌麗しゅう陛下、ミニョン=ペルダンで御座いますわ」
「うむ、お主も今回の争いに参戦し、目覚ましい成果を上げたと聞いておる」
「ははあ〜、陛下の忠実な臣として当然でございますわ」
「うむ、立派な心掛けじゃ。良い娘を持ったなデュック」
「ははあ〜」
国王が壁際に居た1人の男に視線を向け声を掛けると、一歩進み出て一礼をした。
彼がミニョンの父親なのだろう。
その男は美しい身なりに負けない整った容姿をしているのだが、アンベシルは勿論、ミニョンにも似ておらず、ミニョンはきっと母親似なのだろうと想像させた。
(だがあの男・・・)
息子とも娘とも似てはいない男は然し、ある少女と不思議な程面影が重なったのだった。
「それと・・・」
国王の視線が俺の背後に控えるルーナに移ったのを受け、俺はルーナの事を紹介した。
それを受けルーナが挨拶をしたのを見て、国王はかなり感心した様子だった。
「ふむ・・・、だが実に見事な働きであったな、のうケンイチよ」
「はっ、陛下」
「⁈」
陛下の呼び掛けに進み出た男。
何故今迄気が付かなかったのだろう、全員が正装に身を包む空間で、1人革ジャンに革パン、最近バドーで見たばかりだが、此の西洋風の世界には似つかわしくないリーゼントをした男。
その男は猛々しい視線で俺の事を捉えていた。
この男が・・・、ケンイチ=リアタフテ其の人なのだろう。
俺はそう確信するのだった。
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