第24話


「今司様が使われた魔法は威力で言えば中級にあたるとおもうのですが?」

「そうなるのかな?」

「・・・」


 確かローズが使ったサイクロンウエーブで、ミスリルの棒を引き裂いた筈だ。

 あの時、中級と言っていたので同じ位という事で問題無いのだろう。


「それに・・・、魔力で成形された狼だったのでしょうか?」

「ああ、そうだよ」

「あの複雑に動く狼を司様は制御されていた様ですが?」

「ああ、上手くいったな」


 俺が創り出した闇の狼は、声の指示にも心の中で出した指示にも従った。

 これは、実験は成功したと言って良いだろう。

 ただ複雑と呼べるかと言えばまだまだと言うべきだろう。

 相手の背後をとるのは戦いの常套手段ではあるが、それ故に読まれて迎え撃たれる可能性もある。


(フェイントだったりも使っていける様にしないとなぁ・・・)


 そんな風に考え込む俺をアナスタシアはジッと見つめていた。


「ん?どうしたんだ?」

「いえ、驚いていたのです」

「え?」

「中級魔法というのは、本来威力・規模共に強大になる為、制御が甘くなるものなのです」

「ああ、まだまだ納得出来ないよ」

「・・・、そうですか」


 アナスタシアはどこか穏やかな表情でそう呟いた。


「流石、お嬢様がお選びになった方です」

「ん?」

「いいえ、そう言えば・・・」

「?」

「司様は、武芸の心得はお持ちですか?」

「武芸、いや無いな」

「そうですか・・・」


 そう言えば学院の入学試験の時デリジャンから得物を聞かれたのを思い出した。


(やっぱり、戦闘科って武器も使えなければいけないのかな?)


 魔法では無いので、反応するかどうかは解らないので、俺は首から下がるネックレスを撫でた。


「どうでしょう、司様。私で良ければ、剣術の基本を教えさせて頂きたいのですが?」

「アナスタシアが?」

「魔法は魔力が尽きれば使えませんし、強力な魔法を使うものに対しては相手も魔封の術を使ってくる事も多いですし」


 やっぱりあるんだな魔法封じ術って・・・。

 まあ、RPGとかだと強力な魔法使いの魔法封じてタコ殴りとかって、ありきたりだしな。


「それに、魔空間の影響もありますしね」

「魔空間かぁ・・・」


 正直よく解らないんだよなぁ・・・。

 昨日の試験の時、大量の生徒が倒れていたが、俺はなんとも無かったしな。


「司様が影響を受けなくても、共に闘う仲間が耐えれないのなら意味がありませんよ?」

「・・・」


 アナスタシアからの、心の中を読んだ様なツッコミに俺は何も言い返せなかった。

 まあせっかく教えてくれるって言うんだから、お言葉に甘えておくか。


「じゃあ、お願いするよ」

「そうですか、では得物は剣でよろしいですか?」

「ああ」

「では、この中から使いやすいサイズの物を選んで下さい」


 そう言ってアナスタシアは大剣、ロングソード、ショートソード、レイピア、ナイフなど複数のサイズの木刀を指し示した。


(どのサイズがいいだろうな?取り敢えずこいつを使えるか確かめてみるか)


 そう思い俺はネックレスを握り締め、念じてみた・・・、すると手の中には細身の剣が姿を現していた。


「う〜ん、このレイピアサイズの木刀が良いな」

「・・・」

「これにするよ、アナスタシア」

「・・・」

「アナスタシア?」

「・・・、はいわかりました」


 そうして、俺は朝食までアナスタシア指導の下、木刀を使っての素振りの練習をしたのだった。

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