僕らの反抗声明

綿麻きぬ

タイムカプセル

 僕は久しぶりに帰省した。悪友であるあいつも久しぶりに帰省した。


 いわゆる地域の悪ガキであるな。正義を夢見る。


 まぁ、二人とも久しぶりの帰省なので必然的に会うことになった。


 そこで昔話が盛り上がる訳ですよ。その昔話は小学校の時に埋めたタイムカプセルの話になっていった。


 その話は別にたわいもない話だったが、僕らは悪友である。掘り出しに行くのである。侵入禁止の僕らの校舎へ。


 そのタイムカプセルは校庭で一番大きな木の下に埋めてある。確か、お菓子の大きなカンカンに入れていたはずだ。


 僕らはシャベルを持って校舎に侵入するが、木を見て、愕然とした。木が切り株になっているのである。今思うとそこまで愕然とすることではなかったが。


 木に駆け寄って、シャベルで地面を掘りまくる。小学生が埋めたものだから、そんな深くないだろうと思っていたが、これがまた深い。


 小一時間ぐらい掘った頃、ガツンとシャベルが金属のものに当たる音がした。


 二人とも喜びのあまり、シャベルを放り出して素手で掘る。すると、お菓子のカンカンが出てきた。それがどうもおかしい。お菓子のカンカンではあったが小綺麗だ。


 この箱であるのは間違えないから開けてみる。そこには当たりの棒や蛇の抜け殻、100点の算数のテスト、逆に0点の理科のテスト、等々色々入っていた。


 僕はそんな中、上と下をセロテープでくっつけた手紙を見つけた。それは上半分きたなく、下半分綺麗だった。


 あいつを呼び、中を見る。





 これは僕らの夢であり、希望であり、反抗声明だ。


 おれらは世界を変える。

 夢を叶える。

 みんなと仲良くする。

 戦争のない世界にする。

 悪をやっつける。

 将来、社会に貢献する。

 ポイ捨てをしない。

 早寝早起きをする。

 勉強をする。

 結婚したい。

 かわいい女の子と付き合いたい。

 金が欲しい。


 以上





 上半分はこういう内容だった。全く最後は願望じゃねぇか。それに字がきたねぇ。そして、最後がなんで以上なんだよ。もっとあるだろ。二人で笑って、下半分を読み始めた。





 二人とも、久しぶりだね。

 最後に、お前達に会えなくて寂しいよ。

 これを読んでるってことは俺はもういないかな?どうせ、二人の事だからこれを掘り返しに来てるでしょ。

 三人で良く、悪ガキ戦隊悪ガッキーとか言って、俺がリーダーだったよな。

 ここからは真面目な話。上の俺たちのとてつもなく汚い字を読んだ上で読んで欲しい。


 俺は世界を変えられなかった。

 夢を叶えられなかった。

 みんなと心で仲よく出来なかった。

 戦争のない世界に出来なかった。

 悪をやっつけられなかった。

 社会貢献出来なかった。

 俺は何も出来なかった。

 違う、俺は何もしなかった。

 変わる世界が怖かった。

 あの子供の頃の希望は全て絶望に。

 あの子供の頃の夢は全て夢のままに。

 あの子供の頃の反抗声明はただのガキの紙切れ一枚だ。


 何があったかは聞かないでくれ、ただお前らなら分かると思う。ていうか、分かるだろ?


 紙が狭くなってきたからおしまいな。


 最後に俺はお前達と出会えて本当によかった。ありがとな。





 こういう内容だった。この紙は何かで濡れた跡がいっぱい、いっぱいあった。


 僕らはこれを読んで何を考え、何を思ったかは口には出さなかった。


 ただ、僕らはこれを掘り出しに帰省し、思い出したくなくて忘れていた事を考えるきっかけが欲しくてここに来たんだ。


 そして、僕らはこれらのタイムカプセルの中身を全て燃やした。

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僕らの反抗声明 綿麻きぬ @wataasa_kinu

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