第20話 魔王様に安らかな眠りを
あの夜の後、翌朝
「まったく、あの勇者共のせいでまったく休めなかったではないか」
私は朝食を食べながら、二日酔いで鼻を摘まんで生卵に酢を混ぜた何かを飲んでいる二人を眺めていた
「勇者共、なんだそれは」
「フランが言うには二日酔いに効くらしい。だよなフラン?」
肝心のフランは、青い顔で天井を見つめたまま無言で固まって閉まっている。本当に効くのか? 私からも聞いてみるか
「おいフランチェスカ、本当にそのゲテモノは効くのか?」
「う~…」
女勇者は唸りながらジョッキを持ち上げた、私も飲んでるでしょとでも言いたげに。勇者は二杯目のゲテモノを飲もうとしていた
「あ~…、まだ妖精が見える・・・・」
「そのまま精霊術師の力が覚醒するかもな」
「まじかぁ・・・。あ、そういえば腕どうしたんだバルト」
「腕ならもう生えている」
「そうじゃなくて千切れた方だよ。手首から先はフランが持ってるとして残った部分は?」
その事か
「ああそれか、魔力で燃やしたよ」
「火葬済みだったか」
「火葬…、たしか人類の死体処理方法だったか。火葬というより鳥葬に近いな」
「鳥葬?」
「昨日ツマミの肉料理が足らんともめていただろ、その時ちょうど要らない肉があったので追加してやったろう、”私自身の腕を振るってな”。酔っていて気づいていなかったのか? 美味しそうに食べる二人の姿が実に微笑ましかったのだが」
「「うっ!?」」
私の言葉を聞いた勇者はトイレへ駆け込んだ。女勇者など先ほどまで言葉を発するのもままならなかったというのに、元気な事だ。そしてしばらくすると二人は慌ただしく戻って来た
「なんてことしやがる!!」
「なんてことするんだい!!」
まったくすごい剣幕だな、やれやれ
「冗談だ、本気にしたのか?」
「お前ならやりかねないだろう! 本当だな?ホントに冗談なんだよな!?」
言葉を発しなかったフランもしゃべる様になっているし、元気では無いかこいつ等
「げほっ! 胃の中全部吐いちまったよ・・・」
「すっきり出来て良かったではないか、身体も軽くなった様で何より」
「「殺す!」」
こいつ等、私を殺そうと思っても殺せないと思っているからか、まったく遠慮が無いな。あえて受けてたとう
「タン!」「ザシュン!」
私の身体を銃弾が貫き、剣が切り裂いた、当然私の身体は勢いよく血しぶきを上げる
「ブシュゥゥゥゥ!」
おめでとう!よくぞ魔王を倒したな勇者達
「うわ! マジで死んだ!?」
「そんな訳ない、ヤツがこの程度で死ぬわけないだろ! コラ起きな!」
確かに私は死んではいないが、いいのかな? そうなふうに股座を蹴り上げたり顔を踏んだりしていて、はたから見ればこの状況は大惨事だろうに
「きゃあああ!人殺しい!」
「だれか衛兵呼べ!」
ほらな。私がほぼ無抵抗にお貴様らに付き合った段階で少しは不審に思うべきだったな勇者共め
「ち、違うぞ! そもそもコイツ人間じゃないし、この程度で死ぬような奴でもなくてな」
「下手な言い訳してないでさっさとずらかるよ!」
勇者達は走り去って行った、それを追う衛兵と一部の屈強な善良な市民達、愉快な光景だ
「アレはどちらも手配中の者だ!」
「捕まえろ!」
「賞金は俺のもんだ!邪魔するな!」
「殺せれば何でもいい・・・殺せれば何でもいい…殺せれば何でもいい、殺せれば何でもいい!殺せれば何でもいい!! ヒャッハー!!」
「手始めに貴様から逮捕だ!不審者め!」
善良じゃない市民が混じったせいで追っ手は減ってしまったが。どうだ勇者共、追われる側になった感想は? さて、私の方は・・・
「何があったか知らないが可哀そうに・・・」
「いや、殺された後にあんだけ嬲られるんだから、相当恨み買ってる極悪人だろ」
「どちらにしてもこのままにしておけないな、ちゃんと供養してやらないとな」
・・・しばらく死んでいるとするか、いい保養になる
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