純愛の騎士

ぐれこ

第1話 異世界

第1話『異世界』




-1-




冷たい風から心地いい暖かい風に変わってゆくのを肌で感じる。


目を開けるとそこには大きな湖が広がっていた


ゆっくりと身体を起こし辺りを見回す




「...え?どこ、ここ。」




少しづつ頭が回ってきたのか、混乱が生じる


無理もない、さっきまで確かに自分はDVD屋さんに居たはず


それが一瞬でいつの間にか、目の前は学校が建つほどの広い湖に周りは木や草などあり、まるで恐竜時代にタイムスリップしたのではないかと思わせる。いや実際にそうかもしれない。








状況整理出来てるのかもさえも分からなくなってきたがタイムスリップしてるのであればまずい。


ここで万が一恐竜になど遭遇したら数秒で喰われるだろう。




100m16秒ジャストの俺に逃げる勇気なんてそもそもない。




ここはどこだ?




辺りを見回すだけでそこはもう日本ではない事だけはわかる。


漫画とか映画とかでよく見たことある風景は俺の脳内に、ある一つの疑問が生まれた。




異世界....?




いや、そう思うしかないだろう。DVD屋さんにいた時間帯は午後21時頃で当たりは真っ暗だった。それが急に清々しい程の青空が世界を包み込んでいる。夢の中だろうかと疑い、ありきたりに自分の頬をつねってみる。




「いてぇ...」




頬は赤くなり痛みの余韻だけが残った。








(2)




取り合えず動く事に越した事はない


今は明るいが暗くなったら大変だ。ただでさえここがどこかも分からない中、視界が確保出来なければ死も同然だと思う。そもそも人はいるのか、生物自体はいるのか。何も分からないという恐怖程怖いものは無い。




動いたのはいいが、自分より数十倍あるであろう高さの木々がある森の中で果たして生きて抜けれる事が出来るのだろうか。もしこの森が永遠に続いたとしたら...




様々な不安と恐怖が津波のように押し寄せる。


背中は汗でびっしょりと濡れていて気持ちが悪い。




鼻から大きく息を吸い込み、口で息を吐く。




荒くなった息を徐々に整え、意を決する。




「...よし」




大きな湖を背に先の見えぬ深く不気味な森の中へと重い足を踏み入れた。






__________________






「くそっ携帯持ってくればよかった!」




時間がどれだけ経っているのか分からない。


感覚的にもう一時間は歩いているだろう。


上を見上げればさっきまであった青い空は木々で埋もれている。

風はあまりなく、じめじめしていて気持ち悪い


少し歩いた先に小さいがひらけた場所がある。


そこで休もうと思った時だった。




グオォォッ!




酷く低い唸り声が響き、一瞬大地そのものが揺れたような気がした。




突然の唸り声に体が硬直する。




冷たい汗が頬を伝い、雫となって足元に落ちる。




まさか異世界に来て始めての生物の遭遇が魔物だとは思いもしなかった。




前方に現れた醜い魔物は片手に大きな鉈を持ち、こちらの様子を窺いながらじりじりと距離をつめてくる。




二足で立つそれは大きさ的に二メートルぐらいだろうか、筋骨隆々の体格に素手でどうにかなる相手じゃない。


勇敢に飛び掛かっても、あの鉈で一発即死だろう。


顔はぐちゃぐちゃになっていて判別出来ない。


体の色は薄い緑だろうか、もう人間ではないことだけは分かる。




こんな化け物に立ちむかう奴は勇者か命知らずの者だけだろう。






俺の中の選択肢は一つ。




逃げるのみ!!










_____続く








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