咲代とパピ

勝利だギューちゃん

第1話

私には、少し不思議な友達がいます。

彼女とは、私が幼稚園の頃からのお付き合いですので、

もう12年になります。


申し遅れました。

私は、飯塚咲代(飯塚咲くよ)と申します。

11月18日生まれのO型、高校2年です。

普段は、ごく普通に楽しく高校生活をしています。

そう、普段は・・・


その友達は実に気まぐれで、たまにしか会いません。

何の連絡もせず、いきなりやってきます。

でも、私にとって一番の友達です。


あっ、やってきたようです。


「咲代、元気にしてた?」

「パピも、元気そうね」


彼女の名前は、パピ。

蝶の妖精です。

幼稚園の頃、家族でピクニックに遊びに行った時、

お花畑で出会いました。

蝶だけあって、花が好きなんですね。


「当たり前だけど、咲代は大きくなったね。」

「パピは、変わらないね」

「妖精だからね。歳の取り方が遅いの・・・」


いつものように、他愛のない会話をします。

この時間が、私にとってかけがえのない時間です。

パピの事は、家族も友達にも秘密にしています。


「今日はどうしたの?パピ」

「実は、困ったことになって・・・」

「困ったこと?」

パピは、いつになく真剣な表情をしています。


「私の、仕事知っているでしょ?」

「うん、確か死者の魂を、あの世へと導く仕事だよね・・・」

「そうなんだけど・・・」

パピの表情は、ますます真剣になっていきます。


「その仕事が、無くなりそうなの・・・」

「首になるってこと?」

私は疑問をぶつけました。


「それなら、まだいいんだけど・・・」

「えっ・・・」


少しの沈黙の後、パピは観念したように、口を開きました。

「結論から言うわ。もうすぐ人類は滅びるわ。いえ、地球が無くなるの・・・」

「無くなるって・・・」


パピは、さらに続けます。

「人類はいつまで経っても争いごとを止めないわ。神様がいつまでも、我慢すると思う?」

珍しく険しい表情で続けます。

「それに最近の異常気象を、疑問に思わなかった?」

パピの問いに、私は同意するしかありませんでした。


「ついに神様も、堪忍袋の尾が切れて、「一度地球をきれいにしよう」って、結論になったの」

「それで、いつなの?」

「日本時間で、今年の大みそかの24時よ・・・」

「そうなんだ・・・」

「咲代、やけに冷静ね」

「まあね。私もこうなるとは思っていたから・・・」


でも、ひとつ疑問が残ります。

「どうしてそれを、私に話したの?」

「咲代には、残された時間を、悔いなく生きて欲しくて・・・」

「パピはどうなるの?」

「私たちの仕事は、死者の魂をあの世へと導くこと・・・

なので地球が滅べば、もう用済みよ・・・」


私は最後の疑問をパピに訊きました。

「地球は、どんな終わり方をするの?」

「・・・それは、言えないわ・・・・」

パピは私に背を向けました。

そして・・・

「咲代、悔いなく生きてね。さよなら・・・」

パピの悲しそうな表情が忘れらません。


「地球が無くなる」

不思議と怖さはありませんでした。動揺もしませんでした。

自分でも恐ろしくなるくらい冷静でした。


ただ人類の犠牲になる、他の動植物が気の毒でした。

「神様は、区別はするけど、差別はしないのね・・・」

そう思わずにはいられませんでした。



地球が無くなると言うことは、私は誰にも言いませんでした。

言っても、とりあってもらえなには、明白でしたので・・・


運命の日が来ました。

パピの言っていた通り、地球は無くなりました。

兼ねてより、人類の宇宙移住計画がありましたが、それに希望者が殺到しました。

地球消滅の噂は、信じられていたようです。

当然、抽選になります。


私は、応募しませんでした。


選ばれたわずかな人々を乗せたロケットが、飛び立ちました。

でも、その全てが途中でトラブルを起こし、墜落・・・

その衝撃で、地球は爆発しました。


それだけの技術力がありながら、人類は最後まで身勝手でした。

最後の瞬間、パピの声がしました・・・

「咲代、おいで・・・」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

咲代とパピ 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ