彼女の秘密

 彼女は寝ることが大好きで、ご飯を食べ終わったお昼休みはおろか、授業の合間の10分休憩ですら机に突っ伏してスヤスヤと寝息をたてている。


 だがそれは周知の事実で、しかも僕がいるところでなら所構わず眠ってしまうことから、下手したら学校中の人から彼女、僕の存在が知れ渡っている。


 そして、寝ている彼女の一番近くにいるからこそ分かる、彼女が僕の隣でしか言わない不思議な口癖……ある意味の寝言があるのだ。

 これが、1つ目の秘密だ。


「ん~……5年くらい経ったら起こして~」


 いつもこう言ってから寝るのだ。

 もちろん、5年も寝ない。

 いつも数時間ほど寝たら起きてくるのだ。

 ――その間、僕は彼女に寄りかかられているので立ち上がることは出来ず、次の授業の始業のチャイムを教室ではないどこかで聞くことになるのだが。

 しかしそれを先生達は容認している。


 彼女には、もう1つ秘密があるからだ。


 彼女は、不治の病ほどではないし、それが原因で死ぬ訳でもない、単なる体質のようなものなのだが、

『心の底から愛している人が隣にいないと眠れない』

 という病を抱えているからだ。

 これが、ふたつめの秘密だ。


 それが原因で夜はひとりで眠ることができないため、また小学校からの付き合いであるため、両家は快く僕たちの同棲を認めてくれたところもある。


 僕は、そんな彼女とかれこれ7年間付き合っている。

 同い年で、小学校の卒業式の時に僕から告白し、決死の覚悟だったというのにあっさりと「うん、いいよ」と言われた。


 そして、今は同じ高校に通っている。


 もうすぐ僕たちは、卒業する。


 僕は父の務める、それなりの会社に就職することが決まった。

 彼女はというと、未だに進路先が決まってないと言っていた。

 彼女曰く、

「今決めてもしょうがないから」

 とのことだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る