第161話 猜疑心(1)

「はい、あんた~、お願いね」


〈ポン!〉と。


 健太が両手で抱える籠の中に自分の汚れ物宝物を放り込む傾奇者、ヤンキーの姉ちゃんでね。彼女が自身の宝物を籠に入れれば。


「今日は健ちゃん、これだけ頼むね」

「うちもこれだけでいいよ。残りは家のひとに洗濯させるから」

「ああ、私もこれだけでいいよ。全部健ちゃんに洗わせたら彼氏が拗ねるから本当にごめんね」と。


 あの日、内戦が起きた翌日からウルハ率いる傾奇者、不良、ヤンキーのお姉様……。


 まあ、お嬢様達の方はないとしてもこのような台詞が次から次へと漏れるようになったのだ。


 だから健太はいつものようにお姉様……。を境におばば様達から名ばかりの押しかけ女房だった立場から本当の妻……と言っても側室に近い立場だけれど胸を張って健太の妃だと言えられるようになったお姉様達へとニコリと微笑みかけながら。


「いいえ、いいえ、僕も助かりますよ。以前よりも洗濯物の量が減ったので自分自身の時間ができたので本当に助かります」と。


 この小さな国で一番洗濯物の量が多いい洗濯屋健ちゃん自身の両手で抱える籠の中に、自身の洗濯物宝物を入れ込んでくるお妃様達へと告げていくと。


 麗しいお妃様達はホッと安堵した表情へと移り変わりながら満身の笑みを浮かべ。


「あんたがそう言ってくれると助かるよ」

「うん、助かる」

「健ちゃんに妻として中々尽くす事ができないでいるか『どうしよう』と思っていたの」

「うちもそうだよ。御方様に対してちゃんと妻らしく振る舞いができていないから。もう一人の旦那のように拗ねていたらどうしようか? と不安に思っていたんだよ」

「ああ、私も同じ。もう一人の主人の世話もしないといけないから健ちゃんに中々かまってあげられなくてごめんなさい……。私ちゃんと健ちゃんの事も大好きだからね」

「うちもだよ」

「私もだからねぇ、健ちゃん~」

「あんた~、拗ね、不貞腐れて、うちの事を捨てないでよ。お願いだから~。もう少し落ち着いたらちゃんと妻として奉公をするから。それまで我慢していてよ。お願いだよ。あんた~」と。






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