第120話 健太立つ! (3)

「あんた~、あんたぁ~。助けておくれよ~。あんた~。お願いだよ~」


 声を大にして叫ぶ──。


 それも自身の美しい紅色の瞳を濡らし、涙を貯め、大粒をポロポロと落としながら自身の両腕、両足をバタバタと渾身の力──。


 今自分が、ウルハが発揮できる力を最大限に使用しながら。


 相変わらず自分の艶やかな裸体へと覆いかぶさるように馬乗り状態を維持しつつ男、オスだけが持つ対メス用の凶器、刃物で刺し貫こうとしている邪な男、覇王ウォンから自身の大事な乙女、貞操を守るため……。


 そう、自身の愛する美少年と自分以外の妻、妃が彼の華奢な肢体の背へとしな垂れ寄り添いながら甘え、自分自身を守れ、守って欲しい。くださいとしな垂れる姿を自身の濡れた紅の瞳に映し自害……。



 ウルハは死ぬに死ねなくなったから先ほどからこのように絶叫、奇声を上げ叫び──。


 何度も自身の主、健太に助けを願い出る。乞うのだよ。


 絶対に彼では無理。自分自身の夢、想い。願いは叶わないとわかっている。理解をしている。


 でも……。


 それでもね、ウルハは、今自分自身が出来ない。叶わないことを、自身の顔色を変え、震え慄きながら。


「あなた、あなた怖い。怖い」、

「わらわの事を守ってお願い。助けてよ、あなた」と。


 自身の主健太の背に接吻──自身の艶やかな唇を這わせながら助けを囁き、願い、乞うアイカの小さな声がウルハの大きな笹耳へと僅かに聞こえてくるから。


 彼女自身も駄目だ。無理だ。可能性零だとわかっている。理解していてもウルハはアイカのように一度主人を、健太のことを長老、おばば達の命により。集落のためだから彼への虐待、虐め行為を無視、素知らぬ振り。見捨てるようにの下知に対して首を縦に振り納得、心得たと。


 夫、健太に対して情け容赦、情のない振る舞い。妻、妃らしくない振る舞いを冷淡、冷やかにおこなった女、酋長らしい振る舞いをした女性、アイカには絶対にウルハは健太への淡い想い。恋心で負けたくはないから最後に力を振り絞り、泣き叫び、健太を呼び、抗い続けている。


 自分の大事な乙女、貞操を捧げるのは自身の主である健太一人だから。他の男……。



 悪しき男、覇王ウォンにウルハは渡す気などさらさらないので泣き叫び、抗い続け。


 その都度、〈バシン!〉、〈ガン!〉と。


 覇王ウォンから「ウルハ煩い。黙れ。静かにしろ!」


 そして「暴れる。ジッとしろ。俺の何がいつまでたっても入らないではないか」と。


 悪しき男から憤怒しながらの不満と自身の顔、頬への荒々しいビンタや握り拳での強打を受けたり。


 自身の美しいはずの紅色の髪の毛がぐちゃぐちゃ、乱れに乱れるほど髪の毛を鷲掴み、握られて、抗うなと荒々しく吠え、咆哮しながら後頭部を地面へと叩きつけられると言った。


 この小さな国、集落の法に反する酷く荒々しい行為をウルハはウォンから受けながら何とか彼に、邪な男に屈することなく耐え忍んで、『流石ウルハだ!』と褒め称えられても可笑しくはない気丈な自分をウォンと健太の漢二人……だけではないね。


 この悲惨な場へと集いし大半の集落の民へと魅せ続けてはいる。


 しかしだ、余りに悪しき男が女性のウルハに対して手加減。情の欠片も感じられないほど大変に荒々しい行為を続けているから。


 彼女の意識の方も段々と薄れてきているから。


 そろそろ悪しき覇王ウォンの毒牙にかかり男の武器にて貞操を貫かれそうな雰囲気へと移り変わってきたから。


「ウルハ……」

「おい、誰かウルハを助けてやれよ」

「ウォン、ウルハに対してもう充分過ぎるぐらい気が済んだだろう。だから許してやれよ」

「ウォン、お願いだよ。ウルハの事をもう許してやってお願いだ」

「ウォン、このまま姉さんに酷い事を続けたら本当に死んでしまうよ」

「そうだ」

「そうだよ」

「頼むからウルハの事を許してやってくれ、ウォンお願いだから」と。


 この悲惨、惨劇な場へと集うし集落の老若男女問わず覇王ウォンへとウルハのことを許してやって欲しい。解放をして欲しいと願い入れ、嘆願をするのだが。


 この悪しき漢は、この小さな国に平凡で緩やか、穏やかなを布く訳ではなく。自身の武と力で民を従える恐怖政治を布こうとする。企てる。を布く、だから。


「煩い! 黙れ! この女ウルハも今日から俺の妻、妃、所有物にした上に残りの女達……。アイカと妹達……。そしてシルフィーも含めた女達を俺は妃にして、この集落の完全な男王になるのだ」と。


 覇王ウォンはこの場に集う老若男女へと、自ら自身の野望、覇王宣言を声を大にして叫びながら演説するのだ。


「俺に逆らう者は今後、このウルハのようになるから覚悟をしていろ。分かったな?」との脅し言葉も民達へと付け加えながら咆哮するものだから。


 この場にいる者達は、「ひっ!」と悲鳴を上げ俯き始めるのだ。


 覇王ウォンのことがみな、民達は恐ろしくて仕方がないから自身の身体を震わせながら悪しき漢が今からウルハとアイカへとおこなおうとしていす荒々しい暴力と凌辱行為を素知らぬ振りをする。決め込むしかないと覚悟を決め。今後は覇王ウォンの下で忠誠を誓いつつ彼の野望と覇業の手伝い。戦、争いを続けるしかないと思う。覚悟を決める。


 まあ、決めた者が大半なのだが。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る