第94話 酋長の決断(4)

「それでもだ。あそこにいる奴らは、お前が行ってチビの事を、説明をしても、自分の元夫を庇っているだけにしか思わない。だってチビが持つ籠の中にはアイカ、お前達姉妹とシルフィー。そしてウルハやあの中にいる者達の元カノや嫁、今の妻や子供のおしめと言った証拠品がやまのように入っているのだから。アイカの説明を嘘や戯言と思い猜疑心しか募らせないから行くな」と。


 アイカの腕を強く握りながらウォンは顔色変えずに淡々と説明をする。


 でも、アイカは、いくら元彼に健太のところへといくなと言われようが。自身の彼氏の悲惨な姿と様子を見れば、見て見ぬふりなどできる訳がない。


「いや、それでもわらわは自身の彼、主の事が好きだ。愛おしくて仕方がない。だから健太の許へと行き。あの者達へとわらわを含めた女達が健太に謹慎中だから洗濯など出来ないと言われても強引に籠の中に汚れ物を勝手に入れているだけだから。健太には関係ない事だと説明をして、あの者達がわらわの言葉に耳を傾け辞めなければ。わらわが力づくで、健太を助ける。だからウォン、わらわの腕を離してくれお願いだ」と。


 女王アイカは健太のことを荒々しい所業で虐め尽くす漢戦士達多数が、もしも酋長である自身の言葉を素直に聞かず不満を漏らし、拒否をするようならば彼女自身の武を解放──力づくでも彼氏を救うのだと鼻息荒くウォンへと告げる。


 と、なれば? あの場に一騎当千のアマゾネスであるアイカがいけば、あの騒ぎは安易に収集、鎮静化されてしまうことになる。


 そうなればウォンの目論見、策は失敗に終わる可能性が大だから。彼はまた自身の顔色を変え。


(不味い。不味いな。このままだとアイカにあの騒ぎを完全に鎮静化されてしまう。そうなるとあのクソガキをこの集落から追い出す事が不可能になってしまう)と動揺しながら思と。


「アイカ、お前は、この集落の酋長、女王なのに、何軽率な事を申しているのだ」と。


 ウォンは更にアイカの腕を強引に自身の方へと引きながら言葉を放つ。


「はぁ、わらわは別に軽率な事等申してはいない。こんな弱い者虐めを寄って集ってしている事を見逃す事の方が、今後の集落の為にならん。だからあの者達をわらわが強引、力づくで、ねじ伏せ、に謝罪をさせ、平服するようにと諫めるつもりだ。だからわらわの腕をウォンは今直ぐ離せ!」


 ウォンに腕を強く握られ、引っ張られるアイカなのだが、それでも彼女は自身の方へと再度腕を力強く引っ張り返しながら気丈、勇んだ様子を元彼と魅せるから。


(不味い。不味いぞ。このままでは本当に不味くなる……。さてどうするか?)と。


 ウォンは自身の顔色を更に変えながら瞬時に色々な策を自身の脳裏で思案を始め、ある言葉、台詞を思いつくと。


「アイカ、この集落の女王ある酋長のお前が今後守っていきたいのは彼氏のなのか? それとも俺やお前の姉妹、ウルハ等の従兄達やあの場にいる男達を含めたこの集落の民衆達……」と、アイカに告げれば。


「えっ!」と、彼女は驚嘆を漏らすと。自身の方へと力強く腕を引き戻し抗う行為をやめ、動きを止めるのだよ。


 だからウォンは、ホッとしながら安堵。自身の胸をなでおろしながら。


(ふぅ、助かった)、

(う~ん、どうやら上手くアイカの荒ぶっていた気が収まったみたいだ)と。


 アイカの顔色、様子を見ながら元彼のウォンは大丈夫だと思うと。彼はホッと安堵したのだった。



◇◇◇

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