第89話 孤立 (4)

 だから自身の顔色を変えている健太は畦道の横へと身体の向きを変え──瞬時、咄嗟に逃げる。逃走を図ろうと試みるのだが。彼の大事に抱える洗濯籠を瞬時に漢戦士の一人が上から見下ろすように両手を伸ばし籠の両端を握られ、掴まれ、奪われると。


「ほうらぁ~、健太~。格闘、近接戦の練習だぁ~」


 自身の口の端を吊り上げ嘲笑い。小さな彼の背をドン! と、強く押す──。


 まあ、押すから。健太の顔は悲痛な顔へと変化し、「わぁあああっ!」と絶叫を吐きながら地面へと倒れ込んでしまうのだよ。


「いっ、っぅ、痛っ、たたた」と悲痛な台詞を漏らしながらねぇ。


 でもさ、いくら平民の位へと落とされても、未だにこの集落内の麗しく美しいマドンナ、アイドル、セックスシンボル、女王アイカの可憐な一族の女性達を独占した状態へとなっている健太のことを漢戦士、グラディエーター達の嫉妬心からくる憎悪は、彼のことを安易に許す訳もなく。


「健太、何いつまでも転がっているんだ。早く立てよ」と、漢戦士達の一人が、地面にカエルの如き転がる健太を、苦笑を浮かべながら見詰め、自身の身体を屈めながら彼の髪の毛を鷲掴みで掴み握ると。


 そのまま強引に健太の小さな身体を持ち上げるから。


「いっ、痛い。痛いよ。僕の髪の毛を握り引っ張らないでよ。離してよ。おねがいだから」と、健太は己の顔を歪め、辛そうな顔で、自身の地面に転がる身体を起こしながら酷いことをしないで欲しいと嘆願をする。してもさぁ。


 男盛りの彼等には、未だに彼女もいなし、嫁の着て、夜這いのお誘い。許可もでない。


 それは全部彼が原因であり。居る。生きているためだからと、自分達が尊敬する戦士ウォンから聞かされているから。


 彼等は健太のことをこれぐらいの、をやめる気はさらさらないから。


「ほらぁ~。大きな木切れだ。お前にやるよ」と、ケラケラ笑いながら健太の髪を握ったまま別の漢へと放り投げ離す。


「うわぁあああっ!」











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