第11話 ピュアか!?

 私達はそれからさらに2回デートした。清く正しいお付き合いだ。

 そう、もう一度言う。清く正しいお付き合いなのである。

 私達の進展は手を握るで止まっていた。


 リサ姉がデートの報告をする度に、確認してきた私達の進展状況。

『ピュアか! もうお姉さん眩しすぎて見てられない。これは夏休みは進展があるのか!』

 語尾に沢山草が生えそうな調子で言われてしまう。

 私は付き合うことで満足していた。

 ただ、やっぱり付き合ったのだから、キスくらいはもしかしたらすることがあるのかも! くらいは一応身構えていたけれど……そう、何もないのだ。


 ショウにはこれまで彼女はいなかったと思う。

 でもショウは私に悟らせないだけで、キスくらいはもう終わっていたのではと思っていたけれど、実際はそうでもないのかと最近思いつつある。

 すでに誰かと終わらせていたならともかく、キスすらまだ未経験だとしたらと私は良心の呵責苛まれていた。




 スマホ2台目を契約し連絡先を交換したことで、私達は普通の恋人らしく日に何度かやりとりするようになっていた。

 月曜日に連絡がきたときは、てっきりジャンプ買ったぞーかと思ったのに、違う話しだったことで、彼女に送るのと友達に送るのって内容違うんだと思ったりした。

 なんとなく、そのいつもと違うやり取りがくすぐったいように思えたし。

 ショウのほうも何かまだ話したいけど、何話そう的な感じだったので、あえてジャンプとか読むの? とこちらから話しやすそうな話題に切り替えてみた。

 すると話しがはずんだ。




◆◇◆◇


 テストのせいでここ2週間ほど、ユウの姿で会うことはできなかった。

 流石に、このテスト期間中にどこかで着替えてメイクしてってやっていたら私の成績が大変なことになってしまう。

 でも私は本当の姿でほぼ毎日ショウに会っていたからなんとも思わなかったけれど。

 ショウにすると、2週間もの間1度も会えない状況と、テスト期間だし頻繁に連絡をするわけにはという間で悶々としていることを、会えないのさびしいとユウキのほうに愚痴られた。


 というか愚痴といえば、ショウは何も悪くないんだけど。あの時あんな風に考えてましたっていうのをご本人から告げられる羞恥プレイが地味につらい。

 HPが羞恥心でゴリッゴリ削られる。




「夏休み海とかプール行きたい、誘ったら引かれないかな」ってことをユウキのほうに相談してきたせいで、私はテスト勉強しつつ身体づくりをするはめになってしまうし。

 といっても、ウソで塗り固められた顔だから、顔を水につけたらアウトだし、ウィッグがとれてもアウトだし……プールも海も難しいのはわかってるんだけど。

 身体づくりせずいはいれなかった。


 テスト終わってすぐに、平日だと言うのにプールの件を相談したリサ姉が面白がったため夕方から待ち合わせして水着買いに行くことになってしまった。





「顔はずっとウソでも、頑張った身体は本物で己の物になるからがんばれ。というわけで、悩殺できるの買おうね。女はくびれ、くびれよ」

 といいながらリサ姉は、私が持っている露出の少ないタイプを奪い取ると。

 布地の少ないものを2種類グッと押し付けてくる。

 布が少ない! どっちも防御力低いよこれ…… 



「さて、この写真をどっちが好き? って送ってみて」

 ニコニコとリサ姉は私にそう言ってくる。誰に? と言わなくてもわかる、こちらのスマホに登録されている連絡先はリサ姉以外では後一人しかいないのだから。

「いや、だってそれは」

「送ってみて」

 ニッコリとほほ笑む美女の迫力たるやである。

「でも」

「送ろうね! 私が操作して送ろうか?」

 もう送らないという選択肢はそこにはないようだ。

 リサ姉がおもしろがって言葉を付け足したのを送られるのよりかは、自分で送ったほうがましと判断した私は観念して写真を送ることにした。

「……自分で送ります」

「はい、よろしい」



 白のビキニ、下はひらひら2段のスカートタイプをかさねて履けるやつ。

 ストライプのビキニ、胸の部分に段段がついててカバーしてくれるけど、下はもうパンツと何が違うのかわからないやつ。

 両方とも恥ずかしい恥ずかしいぞ、短パン履くやつとかもあるし、むしろへそ出さなくていいじゃないと思う。



『どっち買ったらいいかな?』

 そう打ち込んでいるとリサ姉から駄目だしされて。

『どっちが似合うと思う?』

 に変更された。



 返事はすぐに来た。

『着たの見ないと、選べない』

「なんてきた?」

 そういって、リサ姉に画面をのぞきこまれる。


「あー、これはねぇ。着たの送らないとわからないよね。ほらだからね。試着お願いします」

 そういって、水着2着をリサ姉はもちつつも、私の背中を試着室へと押す。

「いやっ、ちょっとこれは……」

「どうせ、プールにいったら着るかもしれないじゃん。ねっ。ほら、ねっ?」

 押し込まれ、気が付いたら2着の水着を両手で持っていた。


 結局写真は撮ったけれど、下着姿と何が違うんだこれ!?

 送ろうよ~というリサ姉をさすがに黙らせて。



『着てみたら恥ずかしかったので送れない』

 そう送ることになった。



 ショウのほうからは(´・ェ・`) の絵文字だけがきていた。




 とかいいつつ、『ないと困るよ~』、『プール行くかもしれないよ』、『このコーナー30%オフなのに』特に最後の30%オフなのにというリサ姉に負けて、白ビキニお買い上げしてしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る