救わない世界でただ一人
空染 ソラ
誰も私を助けてはくれないのですね
「ナーシェ=グタンプーゲン、お前はこの国の王子を誑かし、この国を操ろうとしていた事から国家反逆罪と見なす。しかし、グタンプーゲン家の今までの王家への忠誠は素晴らしい。故に!!グタンプーゲン家の地位剥奪、及びナーシェ=グタンプーゲンの国外追放とする」
ああ、どうしてこうなってしまったのでしょうか。
顔を上げることが出来ません。
私は何もしていないのに、しかしそれを言ったところでこの結果は覆らないでしょう。死罪を免れただけ幸運かもしれません。
私は王子、エル=アナトイラ様の婚約者として、日々を真面目に生きていました。
辛いことも、悲しいことも、エル様が居たから私は頑張って来れたのです。
だって家に私の居場所は無かったから…。
「あんな奴産まなければ…!」
そうボソッと声が聞こえました。お母様です。
私に愛をくれる筈のお母様は、私の心にナイフを突き刺すだけでした。
「兵よ、ナーシェ=グタンプーゲンを馬車に乗せて北の森へ追放するのだ」
「はっ!」
「おら、立て」
兵士の方に腕を引かれて私は立ち上がります。
城から出ても私は前を向けずに居ました。下を向いて、腕を引っ張られて歩いています。
「乗れ」
ああ、これで私の故郷とはお別れなのですね。
街の人達の罵声がまだ聞こえます。「死ね」「消えろ」「悪魔め」「売春婦が」そんな言葉の嵐、でも涙は出ません。
私は泣いたって誰も助けに来ないことを知っていますから。
それからしばらく馬車に揺られ、私は北の森に連れてこされました。
案の定、私はエル様に捧げる筈だった処女を兵士達によって散らされました。
ここまで来るとどうしようもないです。泣けば殴られるのも分かっていますし。
「ちっ、無表情とか起たねぇわ、帰ろうぜ」
「おう」
「ひひっ、この森は夜になると強い魔物が湧くからなぁ……頑張れよ~ひひひっ!」
笑いながら立ち去っていく兵士達を見送ります。
「………飲水を、探しましょう」
立ち上がり、ふらふらと歩きます。腰が痛いですね。
………私は、なんのために、生きてきたのでしょうか。
分かりませんね。
「あっ、川……」
歩いてしばらく、川を見つけました。
川岸まで行き、川の水を手で掬って1口飲みました。
「神の恵みに感謝しますわ…」
………これからどうしましょう、私の国家反逆罪の事は周りの国には近いうちに伝わる筈です。
そうなると……。
「遠くの国に行きましょうか…」
とりあえず、この森をずっと北まで進みましょう。
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