いつの日か・・・
勝利だギューちゃん
第1話
彼女が旅立った。
二度と帰らぬ旅へ・・・
あまりに突然だった・・・
ここでいう彼女とは、あくまで三人称のこと・・・
恋人の意味ではない。
この時はまだ・・・
彼女の旅立ちの日・・・
先生やクラスメイトが見送る中、
僕は、見送りには行かなかった。
認めたくなかった・・・いろいろな意味で・・・
家の自室に閉じこもり、彼女の事を思い出していた。
外は雨が降っている。
彼女の旅立ちを、神が泣いているのか・・・
泣くのなら、なぜ彼女を旅立たせたのか・・・
神のすることは、理解しがたい。
引き出しから、一枚の写真を取り出した。
彼女と撮った、最初で最後のツーショット写真。
僕はそれを眺めながら、思い出にひたっていた・・・
当日、僕に一通の手紙が届いた。
彼女からのものだった。
そこに書かれていた筆跡は、間違いなく彼女のものだった。
彼女は自分の旅立つ日を感じていたのか・・・
手紙には、こう書かれていた。
「親愛なる○○くんへ
元気?
君がこの手紙を読んでいる頃、私はもう君のそばにはいないよね・・・
私は前から知っていたんだ。
こうなることを・・・
君は誤解しているようだけでど、私は君の事を悪く思ったことはないよ・・・
それだけは、信じてね。
君の事だから、私の旅立ちの日には、来てくれていないよね・・・
でも、それでいいよ・・・
もし、来てくれてたら、君との本当のお別れになってしまう。
私は、嫌だよ。
もし、来てくれていなかったら、君にいつでも会えそうな気がするんだ。
そうそう、私を追ってこないでね。
向こうで、歓迎の準備をして待ってる。
だから、なるべくゆくっくり来てね。
じゃあ、またね・・・
追伸
○○くん、君はもっと自分に自信を持ちなさい
君の大切な、恋人より」
この手紙を読んだ後、僕は初めて彼女の本心を知った。
久しぶりに、心の底から泣いた・・・
しかし、その時は得てして、遅い場合がある。
でも、まだ終わらせない。
いつか彼女と向こうで再会した時に、恥ずかしくない人間でいよう。
そう心に誓った。
そして机に向かい、ペンを握った。
「描こう。書こう。僕の、そして彼女のこの世にいた証を残そう。」
もう、迷いはなかった。
今日初めて、彼女を三人称の彼女ではなく、
恋人の意味で彼女になった。
いつの日か・・・ 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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