ツカムツカマエル青空

ぴろ式

Opening……

 その日、窓から見える青空がいつもより近い気がした。




 いつもは、決して僕なんか寄せ付けないような高さにあるのに、その日に限ってそんな距離を感じなかった。

 といってももちろん手をのばして触れるような近さでは無いし、僕が精一杯身を乗り出しても届くような距離じゃない。



 でも近かった。

 まるで、いつもの教室の椅子が、航空機の座席と錯覚してしまうくらいに。



 (……気のせいかな?)

 僕は別段深い事は考えず、先生が黒板に書き連ねた単語の羅列をノートに写す作業に取りかかろうとした。



 しかし──僕の右手に握った鉛筆がノートに触れる寸前、僕の視界に“それ”は入り込んだ。






 一面に広い青空に、アクセントととして乗っかった雲の白。

 その白が少しずつ薄らいで、隙間から青空を覗かせる──



 ──のではなかった。

 白の下から、決して青空には浮かんでいいものではないものがポッカリ浮かんでいた。






 社会の授業で、散々見てきた“それ”。

 家に帰ると、トイレの扉に貼ってあった“それ”。

 毎晩お父さんが見るテレビの天気予報で、必ず出てきた“それ”──







 夏休みを目前に控えたある日。


 僕は教室の窓から、『日本列島』が青空に横たわっているのを見たんだ。

 

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