独りとコトバ
Ep.1 コトバの始まり
――キーンコーンカーンコーン――
朝の予鈴と同時に自分の席に着く。
教室の窓側の一番後ろ。お気に入りの場所でいつもそこに座る。
僕の通っている学校は、一般的な普通校にも関わらず教室の作りが少し変わっている。
アニメなどでよく映る、大学の講義での机や椅子、教卓をそのまま縮小した感じの配置なのだ。その上、黒板やホワイトボードが一切無い。
当然、と言うべきか席は決まっておらず、授業中に板書する事は一切無い。
にも関わらず、毎年トップレベルの進学公立校だ。
そして、学校自体も若干変わっている。
「文武両道、青春謳歌」
幾つかの校則と共に掲げられている、この学校の方針。校則よりも重要視されているのか、部活は運動部のみで絶対にどこかに所属しなければならない。
また、学校全体のイベントが年に4回ある。
公立校って、進学校ってなんだっけ、と思わせるくらい盛り上がるイベント達は、その1週間前になると授業が無くなり準備期間となる。
国で決まっている授業日数や1年間でやる範囲などをどうやってクリアーしているのか、まるで検討もつかない。
それくらい、何かを行う際には全力でやる―みたいな雰囲気があるのだ。この学校には。
――嫌いではないが。
それでもやはり、なんというか思うところがある。
――キーンコーンカーンコーン――
「朝のHRを始めます。」
――数時間後。
授業を2科目終えた後、食堂に行って本日のメニューと書かれた看板と睨めっこする。
「…………。」
食べたい物が無い…。
これ以上悩むのも無駄なので、いつものやつを頼む。
「すいません、これ下さい。」
「はーい!小鉢はケースの中にあるから、好きなの持っていってね。」
「はい。」
少しして日替わりランチがトレーごと渡される。小鉢を選び、定位置である1番近い端の席に座る。
「いただきます。」
手を合わせて挨拶し昼食を10分程で済ませたあと、趣味である読書を時間ギリギリまでする。
今読んでいるシリーズは異世界ファンタジーものである。
最近異世界モノにハマっており、面白そうなラノベを見つけて片っ端から漁っている。その中でもお気に入りの作品だ。
メインは異世界だが、現実世界の描写もあるその作品は親近感が湧く。ファンの中には、説明が多いとか全然進まないといった事を指摘する人もいるが、殆どの説明を省いて進みすぎるよりはマシだと思う。
「…ホント、こういう作品を書く作者の思考ってどうなってるんだろ。」
自分でも何回か書いてみたいと思ったことはある。しかし、肝心のアイディアや文章はまるで出てこない。
いつか書けるようになりたいなぁ…。
ラノベを手に、そんなことを考えていると、
「よ!あいっかわらず一匹狼な。」
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