第33話  不老不死探偵の助手 其の拾四

 髭オヤジが目配せで合図すると、袴男と外套男が同時に襲い掛かってきた。


「近寄るな!」

 おれはありったけの力を込めて叫んだ。

「おれはお前らを拒絶する!」

 すると、近づこうとしてきた二人は、おれの力で弾き飛ばされた。


「小僧! いったいなにをした⁉」


「おまえらに、指一本触れさせない!」


 だがしかし、これでは膠着状態だ。近付けさせないだけで、それ以上は無い。

 さてどうする? ここをどうやって切り抜ける?


「どうやらコソ泥のガキも、異能を持ち合わせているようだな」ニヤリと厭らしい笑みを浮かべる髭オヤジ「これは飛んで火にいる夏の虫。実験体の一つとして使ってやろう。光栄に思え。おもえみたいな社会のクズたるクソガキでも、国のお役に立てるんだからな。そしてこの国をひいては桃雛家を支える礎となるのだ!」

「なにいってやがる。他人を勝手に犠牲にするな!」

「十文字様、何卒お力添えをお願いします!」

 髭オヤジに「十文字」と呼ばれ応えたのは、燕尾服仮面だった。

 黒い上着の懐から銀色のナイフを取り出すと、なにやら一言二言唱え、おれに向かって投げつけてきた。

 おれは咄嗟に「ナイフ」を拒絶した。


「危ない!」


 しかし燕尾服仮面の放ったナイフはおれの力で拒絶されず、「危ない」と叫んでおれを庇うために前に出た美良の胸に深く突き刺さった。


 え? どうしてナイフが拒絶されない?


「姉さん!」


 おれが困惑で固まった刹那、すべては起こった。

 胸にナイフが刺さった美良に駆け寄った宇良の背中を、今度は髭オヤジが仕込み杖の刃で袈裟切りにしたのだ。


「あぁっっ!」


 宇良の叫び声。

 飛び散る鮮血。

 突如、目の前が凄惨な血みどろの場所になった。

 いったい、なにが、どうして・・・・

 頭の中が真っ白になる。なにも考えられない、なにも考えたくない。


「あ・・・嫌だ・・・嫌だ、こんなの嫌だ・・・もう、みんな出てってくれ‼」

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