第14話 魅惑のパーティー
骨董屋の前に、ハンサム馬車が停まっていた。
「ば、ば、馬車で行くんですか⁉」
春日がまたバカみたいな大声を出した。
「何事も形からと言ってな」
「聞いてないですよ、そんなの⁉」
「あーもー相変わらずうるせーなー。何で行ったっていいだろう。馬車ぐれーで騒ぐな」
「だってだって、
「あーいいから早く乗れ!」
こいつはなんでこんなに取り乱してるんだ?
俺は春日のケツを蹴飛ばした。
ぶつくさ文句を言いながら春日は乗り込み、その後に続いた。
「おい、そのでかいケツをもっと詰めろ」
「で、でかくないっすよ! トキジクさんが蹴るからでしょ⁉ せっかく新調した服なのにぃ」
俺たちは狭い座席に並んで座った。
「旦那ぁ、出していいですかい?」
後ろから馭者が尋ねてきた。
「ああ、やってくれ」
馬車は軽快に走り出した。
「最初は箱型馬車にしようと思ったんだがな、流石にやりすぎだと思って・・・」
話しかけてみたものの、密着して隣に座っているから、春日の緊張が伝わってきた。
「おい、そんな服、おまえ持ってたんだな」
「こ、こ、この日の為に新調したんですよ! さっき言ったじゃないすか⁉」
さっきからなんで怒り気味なんだ? こいつ。
「わざわざ買わなくても、俺が適当にみつくろってやったのに」
「いいんですよ、おれの勝手でしょ⁉」
「結構似合うじゃねぇか、そういう格好も」
「ば、ば、バカじゃないですか⁉ 冗談は顔だけにして下さい‼」
春日は顔を真っ赤にしていきり立った。
緊張するのもしょーがねーよなぁ。どこぞの金持ちの坊ちゃんじゃあるまいし、十代そこそこでお偉いさんが集まるパーティー行くんだもんなぁ。
ま、何事も経験だ。
「よし、頑張れ! 気楽にいこうぜ!」
俺は春日の肩を思いっきり叩いた。
「はぁ?」
当惑した顔を見せる春日。
今はわからないかもしれない。だが、大人になればわかってくれるさ。俺の心意気を受け取ってくれ‼
ガス燈が灯る夜の街を馬車で流すのも悪くない。
帝国ホテルまで歩いてでも行けるんだが、マグナス卿も出席するパーティーだ、政財界の偉い奴らも来るんだろう。とりあえず見栄張って馬車にしてみた。卿に恥かかせる訳にもいかないしな。
「お、そろそろ着くぞ」
日比谷公園の脇を通り抜け、錬鉄の柵が連なる長い塀を過ぎて、やがて現れた門から正面入り口へと入った。
既に馬車回しには何台もの馬車が停まっていて、客を降ろす順番を待っていた。
「なかなか豪勢なパーティーみたいだな」
隣では春日がガチガチに緊張して固まっていた。
はてさて、何も考えずにマグナス卿に招待されたパーティーに来てみたんだが、いったいここで何が待ち受けていることやら。
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