第11話 夜明け前の握り飯
がっくりだ。あぁ、ぐったりだ。謎を追いかけたら更に謎が深まって迷い込んだだけだった。だいたい何なんだよ不死狩りって。逆にこっちが狩られそうになったよ。まぁ俺も不死の端くれなんだけど、不死者だって疲れるし、眠るんだぜ?
不死って一言で言っても、ピンからキリまである訳で、単に長生きなだけや、ちょっとやそっとでは損傷しない体とか、損傷を負っても直ぐ再生しちまうとか、ヴァンパイアみたいに他人から生気を吸い取って生きながらえてるとか、あと完全に完璧に不老不死とか、まぁいろいろなんだよな。
しかし今回の事件は・・・・。
考え事をしている内に我がアジトである神保町の骨董屋に着いた。
「うぃ~寒ぃなオイ。帰りましたよっと」
俺は独り呟きながら店の正面の引き戸の鍵を開け、中に這入った。
夜明けが近いとはいえ、中は真っ暗だった。
そして店の奥で何かが動く気配。
「ふ、ふがぁ? お師匠⁉ じゃなくて
番頭の机の後ろで、助手の春日が寝ぼけた顔で立ち上がった。
「何だこんなところで、ちゃんとベッドで寝とけよ」
「お、オレは店番してただけですからね! 最近物騒だから!」
「それで怖くてここで寝てたのかよ」
「寝てませんって! それに怖くなんかないですよ! 非時さんの帰りを待ってただけじゃないですか⁉」
「素直に最初からそう言えばいいじぇねぇか」
「ば、バカじゃないですか⁉ ウソですよウソ! そんな訳ないでしょ⁉ オレはもう寝ますよ! そこに冷たくなった不味いおにぎりあるから食べたかったら勝手に食べて下さい! あと火の始末ちゃんとして下さいね‼」
春日はぷりぷりしながら二階へと上がっていった。
まったくいじらしいねぇ。
さて、俺は火鉢にかけてあった鉄瓶からお湯を注いで熱いお茶を淹れ、不味いと噂の握り飯を食いながら、ぼんやりと夜が明け始めた店の中を見渡していた。
さて、今夜の出来事はいったい何だったのか。
現場で拾ったバッジを指でもてあそび、明日どうしようかと考えた。
この記章には見覚えがあるぞ・・・。
まずはあのドイツ野郎関連から当たってみるか。
重い体に鞭打って腰を上げた。
やれやれ、疲労困憊だぜ。俺ももうトシかな。
俺は自嘲気味に薄ら笑いを浮かべた。
「ま、なにはともあれ、おかかと昆布の佃煮の握り飯、美味かったぜ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます